
UX関連の書籍が毎年増えてきている。私は職業柄、UX関連の書籍が出版されれば、すぐ読むようにしているので、少しでも何かを得ようとむさぼるように読んできた。
今振り返ってみると、もっと効率よくUXデザインを学ぶことが出来たように思える。そんな私の失敗を踏まえて厳選した書籍をこれから紹介していくので、これからUXを学ぶ人のお役に立てれば幸いだ。
“重要なのはUXの何から学ぶべきかを整理すること”
UXの学習は、「どこから手をつけていけば良いのか? 」 「何から勉強するのが正解なのか? 」 が総じて分かりづらい。そこでUX JUMPでは以下3つの視点から、オススメしたい本だけを厳選して、順番に紹介していく。
【理解】UXデザインの”理解”を深める上で最初に読むべき本はこれだ
“一人から始めるユーザーエクスペリエンス”
内容
UX(ユーザーのより良い体験)を作るための、27のメソッド(方法や手法)が網羅的に書かれており、UXデザインの全体像を掴むことができる本だ。
具体的に言うと、「いつUXデザインを適用するべきか 」 、「何のために実施するのか 」、 「 何にどの程度時間をかけたらよいか 」、「誰を巻き込んで進めていくべきか」などが簡潔に記述されている。
難しい言葉を極力使わないという著者の姿勢が感じ取れ、『UXとは? 』 を知りたいすべての方におすすめの良書だ。
UXプロジェクトをリードする人がどのようなインプットで作業し、何をアウトプットとすべきか簡潔に記述されている。
学べること
UXデザインの実態、手法全般、顧客獲得の手法などを学ぶことができる。
非常に簡素化されおり、今のあなたが抱えるサービスの問題や会社の問題と照らしやすく書かれているため、とにかくイメージがしやすい。
こんな方におすすめ
UXデザイナーを目指している方、携わっているサービスを本気で進化させたいと思っている方、プロジェクトマネージャー、UIデザイナー、エンジニア、リサーチャー、マーケター、営業職などー
私が学んだこと
300以上の実践ケースを元に、それぞれの施策に対して「所要時間・使いどころ・進め方・考え方」が書かれているため、今自分が課題と感じていることと照らし合わせながら読み進められる。一言で表現すると「UXデザインを網羅的に勉強しなければ!」という考えから解き放ってくれた本だった。さらに「実践する際のヒント」という内容がそれぞれのケースに盛り込まれているため、ケーススタディを想定しながら勉強ができたので、最初に読むべき本を選ぶのであればこれしかないと思えるくらいの良書です。
おすすめ度
★★★★☆
難易度
★☆☆☆☆
内容が似ている本
【理解×手法】UXデザインを一から”丁寧”に解説する本
UXデザイン入門

内容
UXデザインの概要を掴むには”ちょうど良い本 ” だ。
UXデザインフローの、個々の手法に関する詳細な内容の書籍は多くあるが、UXデザインフローの流れや手法を “ここまでわかりやすく説明”してくれている書籍は他にない。
学べること
大きく分けて以下のようなフローの詳細を説明してくれている。
デザイン調査 > ユーザモデリング > ストーリーボード > スケッチ > プロトタイプ作成
プロトタイプ実装後は、ユーザビリティ調査 > 分析 > プロトタイプ改修 > ユーザビリティ調査、を何回か繰り返す。というフローを細かく分かりやすい視点で学ぶことができる。
こんな方におすすめ
ディレクター、これからUXデザイナーを目指している方、UIデザイナー、エンジニア、など
私が学んだこと
UXデザインフローと言っても、ひとつひとつのプロセスが一筋縄ではいかない。そんな時に役立った本がこれだった。
頭に入れておくべきこと、すぐ行動に移すべきこと、周りに手伝ってもらうこと、などを整理する上で重要な役割を果たしてくれたと感じている。その上で色々な手法をアップデートしていくと、UXデザイン手法の”標準値”を知ることが出来るだろう。(←これ結構大事!)
おすすめ度
★★★★☆
難易度
★★☆☆☆
【理解×手法】先ずは”UXデザインの全体像”を知れる本
UXデザインの教科書

内容
UXって何ですか?、UXってどのように作り上げていくんですか?という疑問に対して、しっかりと納得感のある回答を返してくれている良書だ。
具体的には以下のような内容で区分けしてくれている。
- 新しい体験価値を実現する新ビジネス・新製品・新サービスの開発
- 既存ビジネスに新しい価値を与える新機能・新サービスの開発
- 従来型の製品・サービスあるいはビジネスのユーザ体験の質の向上
これら3つのパターンそれぞれに関して事例を挙げながら、具体的にどのようなUXデザインのプロセスを経ているのかを紹介してくれている。
学べること
「UXはユーザーを徹底的に理解するための手法」ということを前提として書かれていることが特徴だ。
「UXが求められる背景」「ユーザを重視したデザインの歴史」「UXデザインが目指すもの」のような基礎知識がベースに書かれており、その先の章でUXデザインの基本フレームを幾つかのケーススタディに当てはめて紹介してくれている。ただし、スライドや挿し絵が見づらいため、反復して理解していく必要性がある。
こんな方におすすめ
これからUXデザイナーを目指している方、UIデザイナー、エンジニア、リサーチャー、マーケター、
私が学んだこと
もし私がUXデザインを仕事をしていなかったとしても、ユーザー中心で物事を考える視点が必要不可欠だと感じさせられていたであろう、ある意味きっかけをくれた書籍だ。
現在UXデザイナーとして働いていながらも、ちょっとしたきっかけで、どうしても自分中心になってしまうことがある。そのタイミングでこの「UXデザインの教科書」を読むことで、強制的にユーザー中心の視点に戻る事ができる貴重な本なので重宝している。
おすすめ度
★★★☆☆
難易度
★☆☆☆☆
【手法】UXデザインの成果物を学べる本
Lean UX
Lean UX ―リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン
内容
リーンUXを以下のとおり定義している。
長期にわたる開発において、コンセプト作成時、プロトタイプ作成時、試作品作成時の度ごとに、顧客からのフィードバックを得て、市場の変化にも対応して適宜転換して、リリースしていく試みのことを指している。
一連の過程において最も重要なのは、リリース前からの頻繁な顧客からのフィードバックである。
また、リーンを「贅肉をそぐこと」と表現し、タスクを細分化しスピードを極限まで上げ切る手法を紹介している。
学べること
意味不明なことを言うUXデザイナー達の代わりに、「Leanデザインプロセスはどのように組み立て進めていくのか?」「どんなアウトプットで成果を出す人を指すのか?」について、細かいフローにのせて説明をしている。
一方で、Leanデザインプロセスを実践するための手引きとして活用するのは、内容が難しいためオススメしない。
Leanなデザインプロセスの概略、雰囲気、哲学みたいなものをおさえておきたい、知っておきたいという人にはピッタリだ。
特にLean StartupやAgileを実践したことがない人にとっては、得る物が多い本と言えるだろう。
こんな方におすすめ
ディレクター、これからUXデザイナーを目指している方、比較的大きなプロジェクト(の中のチーム)で仕事をすることが多い方、エンジニア、など
私が学んだこと
私が学んだことは、仮に非デザイナーだったとしても、仕事をする上で”以下3つ”を大切にしながら進めていくことが大切だと気付かされたことが大きい。
①ユーザー命
リーンUXはユーザーの声無しに始まらない。ユーザーの声をもとに改良を重ね、初めてローンチにたどり着くという思考を学べる。
②スピード命
迅速かつ短期的なPDCAサイクルの中で、UXの検証と改良を実行するプロセスをリーンUXと書いているが、そもそも検証に完成品を用意するのではなく、プロトタイプ1つで検証をし、「ユーザーの声や心の中に眠っている感情」を基に徐々に改善を加えていくことの大切さを学べる。
③コラボ命
デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーと密接に協力してユーザーエクスペリエンスの改善を行っていく。ユーザーの生の声をもとに、プロダクト開発に携わるメンバー全員が一体となって、迅速かつ短期的な改善サイクルを回しながらユーザーエクスペリエンスを改善するのがリーンUXの基本という大切な考えを学べる。
おすすめ度
★★★☆☆
難易度
★★☆☆☆
【実践】将来”Web制作・アプリ制作”のUXに携わるための本
Web制作者のためのUXデザインをはじめる本
内容
理解するだけでなく、テンプレート付きですぐに試すこともできる、まさにUXデザインの「現場叩き上げ」の教科書だ。
Web制作者が知っておくべき、UXデザインの「基本」から「ユーザビリティ評価」「プロトタイピング」「構造化シナリオ」「ユーザー調査」「カスタマージャーニーマップ」「ユーザーモデリング」「組織導入」までを、8つの章に分けて解説してくれている。
イラストやテイストが可愛いので読みやすく、飽きずに読み切れると思う。
学べること
利用者・対象者を正しく知る(ユーザーを深く知る)ことに対して、具体例で書かれているため、現在携わっているサービス課題に落とし込みやすい。
例えば、ZOZOの前澤氏はお客様のクローゼットを見に行くし、オイシックスの高島氏はお客様の冷蔵庫の中を見に行くし、クックパッドのUXデザイナーはお客様のキッチンを見に行く。
結局「現場」に答えが眠っているということを多く学ぶことができる。
こんな方におすすめ
ディレクター、UIデザイナー、マーケター、など
私が学んだこと
一般的なUXデザイン関連の書籍は、ユーザー調査から順番に書かれていき、最後は評価で終わることが多い。
本書で注目したいのは、最初からユーザビリティ評価について書かれている点だ。
リアルな現場では、これからUXデザインを導入しようという時に、UXデザインの経験の少ないメンバーでいきなりユーザー調査を行うと、有効な情報を得られなかった等の理由で躓きやすい。
一方で、ユーザビリティ評価はUXデザインの初級者が多い環境でも、それなりに成果を得やすく、確かに導入のきっかけとして適しているプロセスだ。
本書はリアルな現場でもUXデザインを単なる理想論で終わらせず、成果を出すために活用できる一冊としてオススメできる書籍だ。
おすすめ度
★★★★★
難易度
★★☆☆☆
【実践】事業にUXデザインをインストールする本
UX戦略
内容
一言で表現すれば「ユーザーが求めてないサービスを作っても意味がない」ということを体系立てて細かく解説してくれている良書だ。
企業戦略としてユーザー体験の価値向上のマインドを取り入れ、プロダクトを成功へ導くことを「UX戦略」という言葉で表現している。
ユーザーの分析や評価を行い、革新的なユーザー体験を持つプロダクトを作り出す手法について、実例を使って解説してくれている。
学べること
UXとサービス自体の存在価値(求められているか?)は切り離せないものだと考えるようになる。
今では「良いユーザー体験を考えて欲しい」と言われると、そもそものサービスのあり方とかアイディアを考える段階から関わるようにしていくことが大事だということを学ぶことができる。
こんな方におすすめ
コンサルタント、事業戦略に携わっている方全般、営業職、これからUXデザイナーを目指している方、UIデザイナー、エンジニア、リサーチャー、マーケター、など
私が学んだこと
「事業視点×UX視点」を両側から考え抜かなければ、優良サービスとは言えないということを体系的に学ぶことができる。
振り返ってみるとこの本のおかげで思考が広がったように思える(思考が広がった後に書いたnoteの記事)。また、手法の話にはなるが「競合調査/分析」の具体的な方法がUXとつながる流れで書いてあるため現場に落とし込みやすい。
他のUX関連書籍ではここまで行動ベースで書かれていないので、読んで学んだことをスムーズに行動に落としこめたことで大きな学びに繋がった。
おすすめ度
★★★★☆
難易度
★★★☆☆
内容が似ている本
・融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論
【番外編】人々が当たり前のように感じている「使いやすさ」を更に追求できる本
誰のためのデザイン?

内容
良いデザインとは?を「4つの原則」でまとめてくれている良書
- 可視性
- 良い概念モデル
- 良い対応付け
- フィードバック
例えば、扉のデザインを考えた時にそもそも何処を操作すればいいのか見えなければ、開けると言う行為自体とることができない。
また、ドアを押した時にドアが開くという概念に整合性があるべきで、「こうしたら、こうなるだろうな」という仮説をユーザーが作りやすいデザインにするべきだ。
さらに言うと、ドアの左側を押した時に左側が開くなど操作に対する結果をユーザーが理解しやすいようにする必要がある。
最後にうまく操作できなかった時、逆にうまく上手くいった時に何かしらフィードバックがあるべきだ。
これ以外にも、『居酒屋の店員呼ぶボタンとか何も反応がなかったら不安になる。』というような身近なケーススタディが多く書かれているので直感的にイメージがしやすい。
学べること
実際に世にあるモノが事例として多く挙げられている。
デザインをしたモノの良い・悪いを与える要因はどこなのかを、著者の心理学と認知学の両方の観点から説明されるため、読んでいて非常に面白い。
私達が日常的に扱うモノを見つめなおすきっかけをくれ、使いにくい場合にはその原因がどこにあるのかを考える癖が付く。
ただ、難しい言葉が乱立しているためか読み終えるのに時間を要する。
こんな方におすすめ
コンサルタント、事業戦略に携わっている方全般、営業職、これからUXデザイナーを目指している方、UIデザイナー、エンジニア、リサーチャー、マーケター、など
私が学んだこと
1番の収穫は「日常生活の視点が変わった」ことだ。
何となく生活をしている時や、ある”モノ”を使って行為をすることに対して、よく観察するようになった。そうすることで、もっとこうあるべきじゃないか?、もっとこうしたらユーザーが喜ぶのに、という「モノやコト」に対して、様々な角度からアイデアが出てくるようになった。
おすすめ度
★★★★★
難易度
★★★★☆
まとめ
“UXデザイン”をざっくり要約すると、「良い体験を生むための手段」に過ぎない。
理解の促進や手法を知ることはもちろん大切だが、もっとも大切なことは「周りの人々を喜ばせたいという気持ち」だ。
この気持ちを持つために、周りへの感謝を忘れず、まずは“身近な人を喜ばせることから始めるが大切”です。
「思いやりUX」簡単なことからでもいいので始めてみよう!
これまで読んできた書籍一覧
【著者がこれまで読んできた書籍一覧】
「Subject To Changeー予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る」
「機会発見ー生活者起点で市場をつくる」
「誰のためのデザイン?」
「デザインの次に来るもの」
「インターフェースの心理学」
「新版アフォーダンス」
「今すぐ現場で使える コンテンツ ストラテジー」
「一人から始めるユーザーエクスペリエンス」
「さよなら、インターフェース」
「Web制作者のためのUXデザインをはじめる本」
「サブリミナル・マインド」
「UX戦略 ―ユーザー体験から考えるプロダクト作り」
「子どものUXデザイン」
「ノンデザイナーズ・デザインブック」
「IA/UXプラクティス」
「人間中心設計入門」
「UXデザインのやさしい教本」
「デザインスプリント」
「デザインはストーリーテリング “体験”を生み出すためのデザインの道具箱」
「要点で学ぶ、リサーチ&デザインの手法100」
「ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザイン」
「マイクロインタラクション ―UI/UXデザインの神が宿る細部」
「スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ」
「Lean UX」
「デザイン思考の先を行くもの」
「デザインの輪郭」
「融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」
ほか、順不同
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