「デザイン思考」の正体とは|デザイナー以外も正しく理解すべき全知識

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デザイン思考 (Design Thinking) の定義

早速だが、デザイン思考の定義を確認してみよう。

Wikipediaによると、デザイン思考の定義は下記の通りだ。

デザイン思考とは不明確な問題を調査し、情報を取得し、知識を分析し、設計や計画の分野でソリューションを選定するための方法およびプロセスを指す。

この説明で理解できた人は、この記事をそっと閉じてほしい。

私にはさっぱり分からない。恥ずかしいことに、何を、どのように理解すればいいのか整理すらつきそうにない。

私と同じように、Wikipediaの内容が理解できない方向けに、 ” 誰でもわかる「デザイン思考」の考え方”を、事例を交えながら解説していきたい。

“デザイン思考”と”デザイン”の違い

まず、デザインするという行為は、デザイン思考のごく一部に過ぎないことを理解してほしい。

最も重要なのはデザイン的プロセスを通し、どのような問題に対してもクリエイティブなアプローチ活用して解決しようとする”考え方”だ。

デザイン思考という考え方は、

  • いかなる種類のビジネスにも活用可能
  • いかなる部署/役職においても活用可能
  • スタッフ全てがそのプロセスに参加可能

であるため、決してデザイン会社やデザイナーだけのものではない。

優れたデザインとは、視覚的要素を多く含むグラフィックや造形だけでなく、世の中の問題点や課題を明確にして、ユーザーが使っていて心地いい解決策を導きだすことだ。

ある意味では、医者やコンサルの仕事に近いと認識することが重要だ。 

“デザイン”という言葉の裏に隠されたあまり知られていない定義

ちなみに、”デザイン”という言葉には大きく分けて2つの意味があるのを知っているだろうか?

通常グラフィックデザインやWebデザインなど多くの場面で使われるデザインの意味は、絵を起こしたり、色をぬったりと、いわゆるデザイナーが行うクリエイティブな行為を指す。

一方、”デザインする”という動詞の意味の中には、”新しい機会を見つける為の問題解決プロセス”という定義が含まれる。

「使っている人=ユーザー」「これから使いそうな人」が、抱えてる問題に対して“解決する”というプロセスで取り組むことで、今までには考えつかなかった新しいチャンスが見えてくる。

それが“デザイン思考”という考え方(アプローチ方法)が生み出す大きなメリットだ。

課題解決を現実の世界に落とし込んでいくためには、抽象的なユーザーからのフィードバックから少しずつ現実的なプランに落とし込み、最終的には全く新しい創造(アイデア)を生み出す。

それでは具体的に事例を元に、そのプロセスを見ていこう。

デザイン思考のプロセスを解説

デザイン思考は、これからご紹介する5つのプロセスに沿って展開される。

このプロセスを繰り返し行う事で、製品やサービスを今よりも「使いやすい」「心地いい」というところへユーザーを導いてあげる思考だ。

  1. 共感
  2. 問題定義・問題提起
  3. アイデア創造
  4. 試作(プロトタイプ化)
  5. ユーザーに向けてテスト

STEP1:共感

まず、”デザイン思考”という考え方の中心には「人間中心設計」を原則としている。ここでの「共感」は、人々(ユーザー)を深く理解するということを指す。

人間中心設計(HCD=Human Centerd Design)は、製品やサービス・ウェブサイト・アプリなどを開発する際に、プロダクトを使用するユーザーの使いやすさを中心において設計する考え方だ。

プロダクトの開発側が提示した使い方に人間が合わせるという従来の考え方を離れ、使う人の観点でストレスなく使いやすいデザインを追及する

また、ユーザーの利便性を高めて満足度を高めるだけでなく、プロダクトが使いやすくなることでサポートコストが軽減されるなど、企業側にとっても恩恵がある考え方だ。

このプロセスは気づき、インサイトを得る事を目的としている。

人々が『なぜ ・どのように 』 行動するのか、そしてニーズは何なのかを、インタビューや観察などを通して探っていく。

そこから、人々が本当に求めている事を見つけ出し、今までに企業側からは見えなかった「気づき」を”アイデア”に変えてサービスに落とし込む準備をしていくという考え方だ。

ターゲットを観察し、ターゲットの事を理解していくが、ここで大事なことは、マインドにもある常にユーザーの視点に立つことを意識し、背景や課題を見えるようにすることだ。

具体的にはユーザーインタビューやユーザーテストを繰り返し、コンセプトやアイデアの精度を上げていくことがおすすめだ。

  • ユーザーインタビュー
    観察/共感のフェーズにおいて、ユーザーの潜在的なニーズを見つけるために有効な手段がユーザーインタビューだ。ユーザー中心のデザインをするためにもインタビューは非常に重要だが、ユーザーインタビューは、ただ話を聞くだけではなく、相手も自覚していない課題を対話から引き出す事が求められる。解決するべき課題をしっかり特定するためにも、事前準備を怠らないように注意が必要だ。

<参考>

ユーザーインタビューの価値とは?良いインタビューを実施するために抑えるべきこと

STEP2:問題定義・問題提起

ユーザーインタビューなどで観察を行うことで、「ターゲットが困っていること」や「なぜ困っているか」が明確になる。

このフェーズでは、さらに掘り下げた観察と問題定義を繰り返しながら、コアとなる課題を見つけ出そう

ケースによっては「そもそも観察対象が違うのではないか?」といった、根本的な軌道修正が求められる場合もある。

固まりかけている仮説を壊すことは勇気が必要だが、すべてはユーザーがこれまで以上に”優れた体験”が出来るようにするためだ。

ここで大切なのは、チームメンバー全員の意識にぶれがないように、最終的な形をゴールやコンセプトを具体的に定義しておくことが重要だ。

︎STEP3:アイデア創造

「問題定義」で設定された方向性を実現するために、アイデアを出すのがこの「アイデア創造」のステップだ。

どんなアイデアがユーザーに受け入れられるか、思いつく限りのアイデアを発散しよう。現実性は加味せず、とにかく発散することが重要だ。

この後のプロトタイピング、検証で、徐々にコアの問題解決になるアイデアが見つかってくる。

発散したアイデアを決定および検証する際は、仮説をより具体的にする事がここでは重要だ。

STEP4:試作(プロトタイプ化)

アイデアが出たら、検証するためにすぐにプロトタイプを作成しよう。

実際にプロトタイプを作成することで、アイデアがより具現化でき、イメージが湧きやすくなってくる。

プロトタイピングツールを使えば、口頭では伝えきれないアイデアを再現できるので、ユーザーテストや、提案プレゼンの際に説得力が増す。

結果的に裁量がある上長の承認をもらいやすくなり、プロダクトづくりにおける意思決定がスムーズになる。

また、プロトタイプを作成することで、開発メンバーが技術的な実現可能性をはかることが可能になる

︎STEP5:ユーザーに向けてテストをする

「試作」段階で作成したプロトタイプについて、ユーザーテストを行うのがこのプロセスだ。

プロトタイプが出来たらそれで終わりではない。ここからターゲットに向けて検証・改善を繰り返し、試行錯誤しながら、最終的にクオリティの高いアウトプットを目指していく。

検証すべき項目が増えてきてしまった時は、仮説に優先順位をつけることが重要だ。

検証のタイミングは一度きりではないため、優先度が高いものから低いものまでバランスよく分類し、検証・改善のサイクルを小さく早く回すことで、精度が高まっていく。

これを繰り返す事で、商品やサービスのブラッシュアップを行うのだ。

日本や海外でのデザイン思考の活用事例

実際にデザイン思考を活用して製品化されたものを紹介しよう。

海外での事例 「iPod」

米アップル社が開発した携帯型のデジタル音楽プレイヤーだ。実はこの製品も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品なのだ。

それでは、デザイン思考のステップに沿って見てみよう。

STEP1:共感

まず、競合製品の分析や、ユーザーが実際にどのように音楽を聴くのか等の調査を行った。

そこで、ユーザーがCDからPC、そしてプレイヤーへ音楽データを移行する事を手間だと感じている事が分かった。また、「その場で選んだ音楽を、どこに居ても聴きたい」というニーズも併せて発見した。

STEP2:問題定義

「共感」のステップで発見されたニーズにより「全ての音楽を、ポケットに入れて持ち運ぶ」「音楽の聴き方に革命を起こす」というコンセプトが確立した。

    

STEP3:アイデア創造

まず、円盤型のマウスによる画面操作、そしてiPodとPCのデータを自動で同期させるシステムなどの、全く新しいアイデアが生み出された。

   

STEP4-5:試作・テスト

こうしたアイデアを盛り込んだ試作品について、スティーブ・ジョブズは「音楽を聴くために3回以上ボタンを押したくない」「もう少し本体を小さく」「音量を大きく」「音質をシャープに」「メニュー表示を素早く」など、

度重なる要請を出し、試作・テストが繰り返された。

こうして2001年に発売されたiPodは、5年半で累計販売台数1億台を超える世界的大ヒット商品となった。   

日本企業のイノベーション事例 「任天堂Wii」

任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品だ。Wiiの開発過程を、デザイン思考のステップに沿って見てみよう。

STEP1:共感

まず自社の社員の家庭について調査し、「ゲーム機は親子関係を悪化させる原因となっている」「ゲーム機があると、子どものリビング滞在時間が短い」という状況に気づいた。

   

STEP2:問題定義・問題提起

「共感」で得られた気づきから、「家族で楽しむ事ができ、かつ親子関係を良くするゲーム機の開発」という方向性を設定した。

    

STEP3:アイデア創造

開発チームにより様々なアイデアが創出され、例えば「家族みんなで使えるゲーム機」「リモコンのようなコントローラー」「リビングで場所をとらないコンパクト設計」などの案が出された。

   

STEP4-5:試作・テスト

これらのアイデアを元に徐々に形になり、重さ・形状・操作性などの様々な点を考慮し、1,000 回以上の試作が繰り返された。

こうして2006年に発売されたWiiは、最終的に販売台数1億台を超える、国民的家庭用ゲーム機となった。

    

デザイン思考が注目される背景

これまでの課題解決方法

これまで、新たな製品やサービスを生み出す現場では「マーケティングリサーチ」が重要視されていた。

それは「仮説検証型」のアプローチであり、市場やニーズについて調査した結果を分析し、仮説を立て検証し、それを元に製品開発などを行ってきた。

このマーケティングリサーチを実施するためには、事前にある程度正確に問題を把握している必要があるが、ニーズが多様化し変化の激しい現代では、この「仮説検証型」で問題の本質を捉える事が難しいケースも増えてきたのだ。

     

VUCA時代の到来

    

  • Volatility(変動)…変化の質・大きさ・スピード等が予測不能であること
  • Uncertainty(不確実)…これから起こる問題や物事が予測できないこと
  • Complexity(複雑)…数多くの原因などが複雑に絡み合っていること
  • Ambiguity(曖昧)…物事の原因や関係性が不明瞭であること

の頭文字を取った言葉です。これは、現代の世界経済環境がこれら四つの要員によって極めて予測困難となっている状況を表す言葉だ。

このような時代の到来により、人々のニーズなど課題の本質をスピーディーに分析できる方法が求められるようになった。

そこで、ユーザー中心主義であるデザイン思考が注目されているというわけだ。

   

サイクルの加速化

昨今の経済状況は「変化が激しい時代」と言われています。産業の多くは成熟し、それにより技術が発展、製品サイクルも加速している。

併せて消費者の購買行動も多様化した事により、より変化と競争の激しい時代となった。

そのような環境において、チームメンバーとのコミュニケーションを重視し、仮説・プロトタイプ・検証をスピーディーなサイクルで回す事のできる「デザイン思考」が求められている。

    

第4次産業革命

欧米では、製造業をインターネットと人工知能を利用して自動化する動きが加速化しているが、これは、工場の生産性や効率の飛躍的なアップを狙ったものだ。

この「第4次産業革命」により、社会構造そのものの変化が予測される。

そのような変化の中で、これまでの価値観にとらわれない課題解決の方法が求められており、これからは、自ら課題を設定し市場を生み出せなければ、大きなビジネスチャンスは手に入れられない。

そこで、イノベーション創出に長けた「デザイン思考」が注目されているのだ。

      

デザイン思考の効果(期待できること)

それでは、デザイン思考を行う事によって、どのような効果が期待できるのか。

新しい発想を生み出す

デザイン思考の最大の効果は、イノベーションの創出であると言える。つまり、これまでの延長線上ではない、全く新しいアイデアが生まれやすいということだ。

デザイン思考は人間中心設計の考え方であるため、これまでの市場を中心としたアプローチではなく、人々のニーズからその課題の本質を見極める事ができる

    

強いチームを作る

デザイン思考は、チーム間のコミュニケーションを重視し、その思考のプロセスにおいて全員が発言権を持ち、アイデアの重要度も平等に扱われる。

メンバーの役職や上下関係に左右されない意思決定のプロセスにより、積極的なアイデア創出のマインドが醸成されるのだ。    

まとめ

最も重要な要素は「人の深層心理を知ること」

イノベーションの歴史でわかりやすい例は数十年前の、T型フォード車の発明だ。

まだ車がなかった時代、人々の交通手段が馬車だった時、人々に「次に何が欲しいですか?」と問いかけたら、「もっと早い馬が欲しい」という答えが返ってきただろう。

一方で、ユーザーの深層心理には「A地点からB地点までをより早く移動したい」という欲求があったはずだ。

そのポイントを明確に追求する中でフォード社は自動車という発明を生み出すことができたのだ。

デザイン思考とは、当時のフォード社の考え方と同じで、人々が求めるものの深層心理を理解して、新しい技術とコラボレーションしながら世の中をリデザインすることにほかならない。

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