基礎編

「デザイン思考」の正体とは|デザイナー以外も正しく理解すべき全知識

デザイン思考 (Design Thinking) の定義

早速だが、デザイン思考の定義を確認してみよう。

Wikipediaによると、デザイン思考の定義は下記の通りだ。

デザイン思考とは不明確な問題を調査し、情報を取得し、知識を分析し、設計や計画の分野でソリューションを選定するための方法およびプロセスを指す。

この説明で理解できた人は、この記事をそっと閉じてほしい。

私にはさっぱり分からない。恥ずかしいことに、何を、どのように理解すればいいのか整理すらつきそうにない。

私と同じように、Wikipediaの内容が理解できない方向けに、 ” 誰でもわかる「デザイン思考」の考え方”を、事例を交えながら解説していきたい。

“デザイン思考”と”デザイン”の違い

まず、デザインするという行為は、デザイン思考のごく一部に過ぎないことを理解してほしい。

最も重要なのはデザイン的プロセスを通し、どのような問題に対してもクリエイティブなアプローチ活用して解決しようとする”考え方”だ。

デザイン思考という考え方は、

  • いかなる種類のビジネスにも活用可能
  • いかなる部署/役職においても活用可能
  • スタッフ全てがそのプロセスに参加可能

であるため、決してデザイン会社やデザイナーだけのものではない。

優れたデザインとは、視覚的要素を多く含むグラフィックや造形だけでなく、世の中の問題点や課題を明確にして、ユーザーが使っていて心地いい解決策を導きだすことだ。

ある意味では、医者やコンサルの仕事に近いと認識することが重要だ。 

“デザイン”という言葉の裏に隠されたあまり知られていない定義

ちなみに、”デザイン”という言葉には大きく分けて2つの意味があるのを知っているだろうか?

通常グラフィックデザインやWebデザインなど多くの場面で使われるデザインの意味は、絵を起こしたり、色をぬったりと、いわゆるデザイナーが行うクリエイティブな行為を指す。

一方、”デザインする”という動詞の意味の中には、”新しい機会を見つける為の問題解決プロセス”という定義が含まれる。

「使っている人=ユーザー」「これから使いそうな人」が、抱えてる問題に対して“解決する”というプロセスで取り組むことで、今までには考えつかなかった新しいチャンスが見えてくる。

それが“デザイン思考”という考え方(アプローチ方法)が生み出す大きなメリットだ。

課題解決を現実の世界に落とし込んでいくためには、抽象的なユーザーからのフィードバックから少しずつ現実的なプランに落とし込み、最終的には全く新しい創造(アイデア)を生み出す。

それでは具体的に事例を元に、そのプロセスを見ていこう。

デザイン思考のプロセスを解説

デザイン思考は、これからご紹介する5つのプロセスに沿って展開される。

このプロセスを繰り返し行う事で、製品やサービスを今よりも「使いやすい」「心地いい」というところへユーザーを導いてあげる思考だ。

  1. 共感
  2. 問題定義・問題提起
  3. アイデア創造
  4. 試作(プロトタイプ化)
  5. ユーザーに向けてテスト

STEP1:共感

まず、”デザイン思考”という考え方の中心には「人間中心設計」を原則としている。ここでの「共感」は、人々(ユーザー)を深く理解するということを指す。

人間中心設計(HCD=Human Centerd Design)は、製品やサービス・ウェブサイト・アプリなどを開発する際に、プロダクトを使用するユーザーの使いやすさを中心において設計する考え方だ。

プロダクトの開発側が提示した使い方に人間が合わせるという従来の考え方を離れ、使う人の観点でストレスなく使いやすいデザインを追及する

また、ユーザーの利便性を高めて満足度を高めるだけでなく、プロダクトが使いやすくなることでサポートコストが軽減されるなど、企業側にとっても恩恵がある考え方だ。

このプロセスは気づき、インサイトを得る事を目的としている。

人々が『なぜ ・どのように 』 行動するのか、そしてニーズは何なのかを、インタビューや観察などを通して探っていく。

そこから、人々が本当に求めている事を見つけ出し、今までに企業側からは見えなかった「気づき」を”アイデア”に変えてサービスに落とし込む準備をしていくという考え方だ。

ターゲットを観察し、ターゲットの事を理解していくが、ここで大事なことは、マインドにもある常にユーザーの視点に立つことを意識し、背景や課題を見えるようにすることだ。

具体的にはユーザーインタビューやユーザーテストを繰り返し、コンセプトやアイデアの精度を上げていくことがおすすめだ。

  • ユーザーインタビュー
    観察/共感のフェーズにおいて、ユーザーの潜在的なニーズを見つけるために有効な手段がユーザーインタビューだ。ユーザー中心のデザインをするためにもインタビューは非常に重要だが、ユーザーインタビューは、ただ話を聞くだけではなく、相手も自覚していない課題を対話から引き出す事が求められる。解決するべき課題をしっかり特定するためにも、事前準備を怠らないように注意が必要だ。

<参考>

ユーザーインタビューの価値とは?良いインタビューを実施するために抑えるべきこと

STEP2:問題定義・問題提起

ユーザーインタビューなどで観察を行うことで、「ターゲットが困っていること」や「なぜ困っているか」が明確になる。

このフェーズでは、さらに掘り下げた観察と問題定義を繰り返しながら、コアとなる課題を見つけ出そう

ケースによっては「そもそも観察対象が違うのではないか?」といった、根本的な軌道修正が求められる場合もある。

固まりかけている仮説を壊すことは勇気が必要だが、すべてはユーザーがこれまで以上に”優れた体験”が出来るようにするためだ。

ここで大切なのは、チームメンバー全員の意識にぶれがないように、最終的な形をゴールやコンセプトを具体的に定義しておくことが重要だ。

︎STEP3:アイデア創造

「問題定義」で設定された方向性を実現するために、アイデアを出すのがこの「アイデア創造」のステップだ。

どんなアイデアがユーザーに受け入れられるか、思いつく限りのアイデアを発散しよう。現実性は加味せず、とにかく発散することが重要だ。

この後のプロトタイピング、検証で、徐々にコアの問題解決になるアイデアが見つかってくる。

発散したアイデアを決定および検証する際は、仮説をより具体的にする事がここでは重要だ。

STEP4:試作(プロトタイプ化)

アイデアが出たら、検証するためにすぐにプロトタイプを作成しよう。

実際にプロトタイプを作成することで、アイデアがより具現化でき、イメージが湧きやすくなってくる。

プロトタイピングツールを使えば、口頭では伝えきれないアイデアを再現できるので、ユーザーテストや、提案プレゼンの際に説得力が増す。

結果的に裁量がある上長の承認をもらいやすくなり、プロダクトづくりにおける意思決定がスムーズになる。

また、プロトタイプを作成することで、開発メンバーが技術的な実現可能性をはかることが可能になる

︎STEP5:ユーザーに向けてテストをする

「試作」段階で作成したプロトタイプについて、ユーザーテストを行うのがこのプロセスだ。

プロトタイプが出来たらそれで終わりではない。ここからターゲットに向けて検証・改善を繰り返し、試行錯誤しながら、最終的にクオリティの高いアウトプットを目指していく。

検証すべき項目が増えてきてしまった時は、仮説に優先順位をつけることが重要だ。

検証のタイミングは一度きりではないため、優先度が高いものから低いものまでバランスよく分類し、検証・改善のサイクルを小さく早く回すことで、精度が高まっていく。

これを繰り返す事で、商品やサービスのブラッシュアップを行うのだ。

日本や海外でのデザイン思考の活用事例

実際にデザイン思考を活用して製品化されたものを紹介しよう。

海外での事例 「iPod」

米アップル社が開発した携帯型のデジタル音楽プレイヤーだ。実はこの製品も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品なのだ。

それでは、デザイン思考のステップに沿って見てみよう。

STEP1:共感

まず、競合製品の分析や、ユーザーが実際にどのように音楽を聴くのか等の調査を行った。

そこで、ユーザーがCDからPC、そしてプレイヤーへ音楽データを移行する事を手間だと感じている事が分かった。また、「その場で選んだ音楽を、どこに居ても聴きたい」というニーズも併せて発見した。

STEP2:問題定義

「共感」のステップで発見されたニーズにより「全ての音楽を、ポケットに入れて持ち運ぶ」「音楽の聴き方に革命を起こす」というコンセプトが確立した。

    

STEP3:アイデア創造

まず、円盤型のマウスによる画面操作、そしてiPodとPCのデータを自動で同期させるシステムなどの、全く新しいアイデアが生み出された。

   

STEP4-5:試作・テスト

こうしたアイデアを盛り込んだ試作品について、スティーブ・ジョブズは「音楽を聴くために3回以上ボタンを押したくない」「もう少し本体を小さく」「音量を大きく」「音質をシャープに」「メニュー表示を素早く」など、

度重なる要請を出し、試作・テストが繰り返された。

こうして2001年に発売されたiPodは、5年半で累計販売台数1億台を超える世界的大ヒット商品となった。   

日本企業のイノベーション事例 「任天堂Wii」

任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品だ。Wiiの開発過程を、デザイン思考のステップに沿って見てみよう。

STEP1:共感

まず自社の社員の家庭について調査し、「ゲーム機は親子関係を悪化させる原因となっている」「ゲーム機があると、子どものリビング滞在時間が短い」という状況に気づいた。

   

STEP2:問題定義・問題提起

「共感」で得られた気づきから、「家族で楽しむ事ができ、かつ親子関係を良くするゲーム機の開発」という方向性を設定した。

    

STEP3:アイデア創造

開発チームにより様々なアイデアが創出され、例えば「家族みんなで使えるゲーム機」「リモコンのようなコントローラー」「リビングで場所をとらないコンパクト設計」などの案が出された。

   

STEP4-5:試作・テスト

これらのアイデアを元に徐々に形になり、重さ・形状・操作性などの様々な点を考慮し、1,000 回以上の試作が繰り返された。

こうして2006年に発売されたWiiは、最終的に販売台数1億台を超える、国民的家庭用ゲーム機となった。

    

デザイン思考が注目される背景

これまでの課題解決方法

これまで、新たな製品やサービスを生み出す現場では「マーケティングリサーチ」が重要視されていた。

それは「仮説検証型」のアプローチであり、市場やニーズについて調査した結果を分析し、仮説を立て検証し、それを元に製品開発などを行ってきた。

このマーケティングリサーチを実施するためには、事前にある程度正確に問題を把握している必要があるが、ニーズが多様化し変化の激しい現代では、この「仮説検証型」で問題の本質を捉える事が難しいケースも増えてきたのだ。

     

VUCA時代の到来

    

  • Volatility(変動)…変化の質・大きさ・スピード等が予測不能であること
  • Uncertainty(不確実)…これから起こる問題や物事が予測できないこと
  • Complexity(複雑)…数多くの原因などが複雑に絡み合っていること
  • Ambiguity(曖昧)…物事の原因や関係性が不明瞭であること

の頭文字を取った言葉です。これは、現代の世界経済環境がこれら四つの要員によって極めて予測困難となっている状況を表す言葉だ。

このような時代の到来により、人々のニーズなど課題の本質をスピーディーに分析できる方法が求められるようになった。

そこで、ユーザー中心主義であるデザイン思考が注目されているというわけだ。

   

サイクルの加速化

昨今の経済状況は「変化が激しい時代」と言われています。産業の多くは成熟し、それにより技術が発展、製品サイクルも加速している。

併せて消費者の購買行動も多様化した事により、より変化と競争の激しい時代となった。

そのような環境において、チームメンバーとのコミュニケーションを重視し、仮説・プロトタイプ・検証をスピーディーなサイクルで回す事のできる「デザイン思考」が求められている。

    

第4次産業革命

欧米では、製造業をインターネットと人工知能を利用して自動化する動きが加速化しているが、これは、工場の生産性や効率の飛躍的なアップを狙ったものだ。

この「第4次産業革命」により、社会構造そのものの変化が予測される。

そのような変化の中で、これまでの価値観にとらわれない課題解決の方法が求められており、これからは、自ら課題を設定し市場を生み出せなければ、大きなビジネスチャンスは手に入れられない。

そこで、イノベーション創出に長けた「デザイン思考」が注目されているのだ。

      

デザイン思考の効果(期待できること)

それでは、デザイン思考を行う事によって、どのような効果が期待できるのか。

新しい発想を生み出す

デザイン思考の最大の効果は、イノベーションの創出であると言える。つまり、これまでの延長線上ではない、全く新しいアイデアが生まれやすいということだ。

デザイン思考は人間中心設計の考え方であるため、これまでの市場を中心としたアプローチではなく、人々のニーズからその課題の本質を見極める事ができる

    

強いチームを作る

デザイン思考は、チーム間のコミュニケーションを重視し、その思考のプロセスにおいて全員が発言権を持ち、アイデアの重要度も平等に扱われる。

メンバーの役職や上下関係に左右されない意思決定のプロセスにより、積極的なアイデア創出のマインドが醸成されるのだ。    

まとめ

最も重要な要素は「人の深層心理を知ること」

イノベーションの歴史でわかりやすい例は数十年前の、T型フォード車の発明だ。

まだ車がなかった時代、人々の交通手段が馬車だった時、人々に「次に何が欲しいですか?」と問いかけたら、「もっと早い馬が欲しい」という答えが返ってきただろう。

一方で、ユーザーの深層心理には「A地点からB地点までをより早く移動したい」という欲求があったはずだ。

そのポイントを明確に追求する中でフォード社は自動車という発明を生み出すことができたのだ。

デザイン思考とは、当時のフォード社の考え方と同じで、人々が求めるものの深層心理を理解して、新しい技術とコラボレーションしながら世の中をリデザインすることにほかならない。

UXとUIの違いがスッキリわかる|専門家が事例をもとに解説

UXとUIの違いが本当の意味で理解していない人は非常に多い。

それは『UX』や『UI』という言葉と接したことのあるビジネスパーソンだけではなく、UX/UIデザイナーと称する人もそうだ。

UXとUIの違いを言語的に理解するだけでは、本当の意味で違いがしっくりこないと考えているため、この記事を通してUXとUIの違いを体験していただきたいと考えている。

分かりやすく理解してもらうため、以下の流れで進めていきたい。

  • UIとUXの違いをわかりやすく解説
  • UI⇒UXの順で事例を交えながら紹介

それでは早速、UIとUXの違いを紹介したい。

UIとUXの違い

UIとUXの違いは以下のように紹介されることが一般的だ。

「そんなことは知ってるよ」という人は多いと思うが、実感をともなっている人はどれくらいいるだろうか?

早速、体験してみよう。

この文章を読んでいるということは、スマホかPCを見ていると思う。

スマートフォンのUIとUX

“UI”は、今まさにあなたが触れている「この瞬間・瞬間」の画面(インターフェイス)から得られる情報を指す。

“UX”はというと、説明が複雑なので立ち止まってもらうため、ひとつ質問をしたい。

質問

「あなたはそのスマートフォンをなぜ購入しましたか?さらに、なぜ今も使い続けているのですか?」

考えていただけただろうか?

その理由における感情や体験こそが、UXの正体だ。

UXはUIと違い「見つけた瞬間〜使い続けている現在まで」の感情や体験全体を指す。

例えば、

  • 「気がついたらストレスなく使えるようになっていた」という体験
  • 「このスマホで撮影した写真には思い出がたくさん詰まっている」という感情
  • さらに、「次はどのスマホに買い換えよう?」という感情

といったような感情や体験のすべてを包括するのがUXだ。

以上のようなことを簡単にまとめると、

UI(User Interface)によって変えられるものは『人間が機器を見たり、触れたりしたとき、その瞬間の感覚』だ。

一方で、UXによって変えられるものは『サービスをつかうコトによって「嬉しかった!」、「使って良かったぁ!」とか「めっちゃ便利だった!」という感情』だ。

UI(ユーザーインターフェイス)とは

UI設計の具体例

インターフェイスと聞くとWebサイトやアプリなどの画面そのものを想像しがちだが、実は、インターフェイスはそれにとどまらない。

人間の目とモノを繋ぐ対象が何かによって呼び名が変わり、大きく分類すると、3種類になる。

  1. 人間とモノを繋ぐ、ハードウェアインターフェイス。(洋服、メガネ、椅子 etc)
  2.  ソフトとソフトを繋ぐ、ソフトウェアインターフェイス。(API etc)
  3. 人間と何か (主にデバイス) を繋ぐ、ユーザーインターフェイス (UI)

よく言われているのが、3番目の人間と何か (主にデバイス) を繋ぐ、ユーザーインターフェイス (UI) が代表格ではあるが、整理してみると

  • 「U=ユーザー」×「I=インターフェイス(モノそのもの)」

なので、洋服もメガネもインターフェイスの一部であると整理できる。

例えば「メガネ」であれば、メガネそのものがインターフェイスであるという整理をすると分かりやすいだろう。

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは

「メガネ」でUXデザインを例えると、

目が悪いと感じた瞬間(Trigger)〜 使い続けている今(Now)〜これからどのような体験を期待しているのか(Future)までの一連の体験全てを指す。

UXデザインが分かりにくい要因のひとつとして、メガネのようなモノ単体に対しての体験を指す場合もあれば、空間や環境、といった”雰囲気”を合わせて、モノの魅力を高めることを指す場合もあることが原因のひとつだろう。

まだまだ他にも要因は多く存在するのだが、ここでは割愛させていただく。

UX設計の具体例

体験(UX)を変える設計とはどのようなイメージだろう?

世界で成功している企業の中で、特にUX設計に時間をかけ、さらにユーザー体験を明確に変えたプロダクトといえば「ダイソン」が有名だろう。

※公式ページより引用

では、どのように「UX=ユーザー体験」を変えてきたのか紹介しよう。

このダイソン社で作られたサイクロン掃除機の第1号(DC01)が発売されたのが1993年のこと、15年という年月をかけて「5,127の試作品」と「数万人のユーザーヒアリングやテスト」を繰り返し、常にアップデートを繰り返してきた。もちろん現在でもだ。

具体的に、どのようなフローで改善を繰り返しているのかは下図を見て頂きたい。

ここで勘違いしてほしくないのは、「見た目=UIの改善」を繰り返してきたのではなく、使い勝手や機能をユーザーのニーズを抽出しながら改善を繰り返してきたことだ。

なんと、その数は5,000回以上というから驚きだ。

とてつもなく長く険しい道のりだということは言うまでもないだろう。

ゴミを捨てるときにホコリが舞う、交換が面倒、フィルターが目詰まりするなど様々な不満を持っているユーザーからの声にひとつひとつ丁寧に答えていったことによって、結果、人々の体験を変えることができた素晴らしい事例だ。

そもそもなぜUIとUXが同一に扱われるのか

UXデザインは、ユーザーが「サービスを認知し脳細胞が発火した瞬間」から、「サービスを忘れてしまうまで」の体験全てを指す。

UIとUXの関係が曖昧になりやすい要因のひとつは、その体験の中に「UI=インターフェイス」が包括されていることだ。

アプリやWEBサービスを例に考えると、

  • 「サービスを認知した瞬間から、使いやすい・使いづらい」という感情に繋がったことは、その瞬間・瞬間のインターフェイスから発信される情報(UI)のせいだったのか?

もしくは、

  • サービスを認知した瞬間から、何らかの環境要因や充電の持ちなどが積み重なって、フツフツと湧き上がってきた感情(UX)のせいだったのか?

ということを考えてみてほしい。

上の図で示されているように、UXの中にUIが包括されているのは、一連の体験の中で、ユーザーの感情を上向かせるためには、

「体験の設計×その体験を助けるインターフェース」

の両側からの課題解決が必要不可欠となるため、”UI/UX”のような曖昧な表現が生まれてしまう。

大切なのは、「UIとUXにあまり境界線を引こうとしないこと」だ

サービスを通じてユーザーの「小さな成功体験」を積み重ねていくためには、UI=インターフェイスデザイン、UX=体験デザインの両側から真摯なアプローチが必要だからだ。

UIデザインの改善案

ここからは、具体的にUIやUXをどのような改善策が考えられるのか見ていこう。

UIデザインの改善案

「問い合わせボタン」を例に考えてみる。

仮にあなたのWEBサイトにこの問い合わせボタンがあったとする。
どちらが「押す」という行動を後押ししてくれるだろうか?
さらに、この後どんなことが起こるのか分かりやすいのはどちらか?

おそらく答えは”右側”だろう。

UIを改善する上で大切なことは以下の通りだ。

  • 自然と行動想起ができるようなデザインであること
  • 次に何が起こるのか?少ない情報量で伝えてあげること
  • 文字情報と、カラーや形状の整合性が合っていること

挙げればキリはないが、この3点に気を配るだけで、全く別のサイトになるだろう。

UIデザインを設計ときに最も忘れてならないのは、

  • 「誰に」「どのような」情報を届け、総じてどのような体験を目指しているのか?

を考えながら作り上げていくことだ。

UIとUXが密接な関係にあるのは、このようにUIとUX設計を行ったり来たりしながら完成を目指すところにある。そのため切っても切り離せない存在であるということは理解できるだろう。

UXデザインの改善案

UXデザイン=ユーザー体験の改善については、UIデザインと比べて説明が非常に難しいので事例を元に紹介していこう。

UX設計のために踏んだ5つのステップ「ダグ・ディーツが小児患者とMRIにかけたデザインの魔法」とは?

GE(ゼネラル・エレクトリック)ヘルスケアという医療機器メーカーでCAT、PETやMRIスキャナのデザインを担当していたプリンシパル・デザイナーのダグ・ディーツ(Doug Dietz)氏。

ダグ氏は去年に米国講演会グループ「TED」のコミュニティであるサンノゼのTEDxで、自らのデザイン・プロジェクトの失敗と成功を語って、観客総立ちの拍手喝采を浴びた。

子供たちと家族のために医療業界を変革させる(英語のみ)

恐怖と苦痛を期待と冒険に変えた理由

20年もの経験を持つベテラン・デザイナーのダグ氏が、ユーザーエクスペリエンス(UX)のデザインに真剣に取り組むようになったきっかけは、とある少女の涙だった。

ダグ氏は、自分がデザインしたスキャナを設置して病室から出ようとしたとき、入れ違いに入って来た子供とその家族の姿を見た。

子供はまだ7歳くらいの幼い少女で、ダグ氏のデザインしたスキャナのユーザーとなる患者だったが、その少女はスキャナを見た途端、怖がって泣き出してしまったのだ。

薄暗い部屋に設置された低い音を立てる見慣れない大きな機械の内部に入るのが、どうしても嫌だと泣いて訴えていた。
そして、そんな少女をどうしてなだめればいいのか判らず、途方に暮れている両親の姿。

患者である子供のほとんどがこの少女と同じような反応を示し、鎮静剤が使用されていることを病院側から知らされたとき、ダグ氏の心は打ち砕かれた。

(幼い子供が病気になるだけで十分大変なことなのに、私がデザインしたスキャナのために、その子供や家族が余計な恐怖と苦痛を経験している…)

この問題を解決するために、機能やユーザビリティではなくユーザーの体験(エクスペリエンス)を改善するための新プロジェクトが開始された。

少女の体験を変えた5つのステップ

  1. Emphasize(まずは共感すること)
  2. Define(再定義する)
  3. Ideate(アイデアを創出する)
  4. Prototype(試してみる)
  5. Test(子供達に改めて使ってもらう)

    

1.共感するところから始める

Emphasizeとは共感能力のことだ。

「ユーザーである子供たちの気持ちを理解し、どうすれば彼・彼女らがスキャナを楽しく使えるのか」を追求するために、

ダグ氏のチームは、地元の保育園で子供達や子供の教育、医療に関する専門家らと数多いブレインストーミング・セッションを行った。

そして子供達について”徹底的”に学び、「子供たちが楽しいと思う経験は何か」「恐怖感を軽減させるためにできることは何か」を明確にしたのだ。

【共感とは、相手の意識を想像し、自分の意識に反映させる能力である】

 

2.再定義する

次に、現在抱える問題点や状況などを明確に定義した。
定義されたことは以下の3つだ。

  • 精神的苦痛を和らげるために、子供たちの80%に対して鎮静剤が使用される。
  • スキャンに必要な数分間、中にいる子供たちは身動きすることができない。
  • スキャナの外観や環境が、子供たちの恐怖感や不安感を増す。

   

3.アイデアを創出する

このプロジェクトでは、ユーザーである子供たちの五感を楽しませることにフォーカスし、以下のように改めて体験をデザインし直した。

  • 上部から流れる青い照明の下にある、その道を歩いていくと、 横には鯉が泳ぐ池が見える。
  • ジャスミンの香りが立ちこめられている部屋に入ると、そこにある踏み石が並べてある道の上を歩く。
  • スキャナの中にはカヌー・ボートが置かれており、子供たちは 「池の中から鯉が飛び跳ねるかもしれないから、この中に横たわって動かずじっとしていてね」と聞かされる。

   

4.プロトタイプ

上記で出したアイデアを、そのまま形にし実際に環境を整えた。

すると、このジャングル・アドベンチャーを見て、それまで嫌がっていた子供たちが、自分から進んでスキャナの中に入っていくようになった。

機能は全く同じスキャナなのにも関わらず、子供達の体験は明らかに変わった。

スキャナの中でじっとしていなければならない間も、「一体自分には何が起こるのだろう」という恐怖と不安から 「いつ鯉が池の中から飛び出してくるのだろう」という期待と喜びに変わったからだ。

ダグ氏は、新しいユーザー体験をデザインすることで【恐怖と苦痛】を【期待と冒険】に変身させたのだ。

 

5.ユーザーテスト

ジャングルアドベンチャーに続き、ダグ氏は海賊アドベンチャーや珊瑚シティなどというデザインを創り出し、それらも大成功させてしまう。

どちらも根底にあるコンセプトはジャングル・アドベンチャーと同じだが、各自のテーマに合わせて、以下のような独自の工夫がなされた。

海賊アドベンチャー

  • スキャナを船と見立てて内部に操舵装置するためのハンドル、外部には海を見立てた池のようなオブジェを設置。
  • ティキ像があり、ピナコラーダなどの飲み物が入ったグラスが置いてある南国のバー風インテリア。
  • 子供達が入室するときに海賊の帽子を渡され、看護婦さんは全員海賊の衣装を着るという演出。
珊瑚シティ

  • ディスコのミラーボールの白い照明を利用し、泡のように見せる。
  • 海中にいるような感覚を生み出すための光を落とした照明。
  • ハープの音楽。
  • スキャナを黄色い潜水艦のように見せるようなデザイン。

まとめ

このスキャナを導入した結果、ユーザーである子供達の体験は「怖くて恐ろしいもの」から「楽しくてワクワクするもの」に180度変化した。

その結果、鎮静剤を使う子供の数は激減し、子供が嫌がらないために時間や労力も短縮され、ユーザーである子供や、その家族の精神的負担を減らしただけではなく、病院側の利益も大幅に上昇した。

まさに相乗効果を生み出すことに成功した、ユーザーエクスペリエンスの好事例と言える。

 

さいごに

私たち人間はどうしても感情に支配される生き物であることに違いはない。

これから、どのように時代や技術が変わっても、私たちが人間であり続ける限り、お互いの【共感能力】は重要なもので在り続ける。

これから一体どんな分野で、なにを通じて、どんな物を創り出そうが、お互いデザイナーとして、ダグ氏が提唱するこの【デザインの鼓動】を常に感じ続けることがユーザーエクスペリエンスの改善にとって最重要であると言える。

「それだけのことか」と思う方もいるかもしれないが、【純粋にユーザーの課題を解決したい!】そう思えることこそが、ユーザーの体験をより良くする“きっかけ”になるのだろうと、改めて感じている。

【厳選】UXデザインを理解し、実践するための本7選|専門家が本当におすすめしたい本


UX関連の書籍が毎年増えてきている。
私は職業柄、UX関連の書籍が出版されれば、すぐ読むようにしているので、少しでも何かを得ようとむさぼるように読んできた。

今振り返ってみると、もっと効率よくUXデザインを学ぶことが出来たように思える。そんな私の失敗を踏まえて厳選した書籍をこれから紹介していくので、これからUXを学ぶ人のお役に立てれば幸いだ。

“重要なのはUXの何から学ぶべきかを整理すること”

UXの学習は、「どこから手をつけていけば良いのか? 」 「何から勉強するのが正解なのか? 」 が総じて分かりづらい。そこでUX JUMPでは以下3つの視点から、オススメしたい本だけを厳選して、順番に紹介していく。

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UXデザイナーのリアルな実態|業務内容から年収までわかりやすく紹介

UXデザイナー自体が少ないため、リアルな実態はあまり知られていない。

「UXデザイナーになりたい。」

「UXデザイナーってどんなことをやっているの?」

「UXデザイナーに依頼をすると、かなり高い請求がきた。」

・・・などという質問を良く受ける。

ここ数年で一般的にも認知されてきたが、まだまだIT界隈や外資系企業、感度の高いビジネスマンに知られている程度だろう。

この記事では、UXデザイナーが各職場(デザイン会社や事業会社など)でどのような業務を行っているのか、元Goodpatchデザイナーに協力のもと、紹介していく

この記事でわかること

  • UXデザイナーの年収がざっくりわかる
  • UXデザインのアウトプットや単価感がわかる
  • UXデザイナーに求められることがわかる

※もっとUXデザイナーに関する、より良い記事にしていきたいので、こういう情報が欲しいというものがあれば、コメントや『問い合わせ』にて質問などをしてもらえると幸いだ。

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人間中心設計とは?HCD資格保有者が難しいことばを使わず徹底解説

『人間中心設計』という言葉を初めて知った人にとっては、とっつきにくい用語だろう。

私自身、『人間中心設計』専門家という資格まで取ったが、いまだに好きな言葉ではない。

これから出来る限りわかりやすく『人間中心設計』について紹介していくが、初めに、いわゆる”教科書に書いてある定義”を紹介しておこう。

『ISO 9241-210:2010』における『人間中心設計』の定義は以下のとおりだ。

人間中心設計とは、システムの使い方に焦点をあて、人間工学やユーザビリティの知識と技術を適用することにより、インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的とするシステムの設計と開発へのアプローチである。

※『人間中心設計の国際規格ISO9241-210:2010のポイント』のP7より引用

私は10回ほど繰り返し読んでみたが、正直何のことかさっぱりわからなかった。

人間中心設計は難解な用語などではなく、UXをよりよくする上で重要なプロセスだ。

この記事が少しでも『人間中心設計』の考え方を理解する上で役に立てば幸いだ。

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UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?UXを正しく理解するための全知識【保存版】

ようこそUXの世界へ。

UXに関する議論や説明は、初心者には難しすぎて実務で使えないものばかりだ。

あるレベルまではUXの解釈や定義は実務を行う者にとってそれほど問題にならないと考えている。

とはいえ、しっかりした定義を知りたいという方のために、広く認識されている『ISO 9241-210:2010』にて定義されたUXを紹介しよう。

UXとは、製品やシステム、サービスの利用、および/もしくは、予想された使い方によってもたらされる人々の知覚と反応である。

※『人間中心設計の国際規格ISO9241-210:2010のポイント』のP15より引用

この定義を見て、スッと腹落ちした人をこの記事の読者として想定していない。

この記事は、UXデザインの専門家を対象にしたものではなく、実務としてUXデザインに携わる方を対象にしている。

UXを感じ取り、理解してもらえるような構成になっているので、順番に読み進めてほしい。

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