人間中心設計(HCD)とデザイン思考の違いを徹底的に解説|保存版

タイトルを見て、「あっ見たことある」と思った方も多いのではないだろうか?今回お話する内容は、ある種UX(ユーザー体験)を形成する”根幹や真意”ではないだろうかと思う。

そこまで、壮大な物語を語るような前振りをしてよいものか?と筆者自身も執筆していて迷いはある。しかし、”人間中心設計(HCD)とデザイン思考に違いがある”ことを知ってほしい。「そもそも違いなんてあるの?」との意見も聞こえてきそうだが、これが実はある。

今回は人間中心設計(HCD)とデザイン思考の違いについて比較・考察を踏まえながら皆さん分かりやすく、じっくり解説していこうと思う。人間中心設計(HCD)とデザイン思考の違いを語る前に、まずはそれぞれの概要・特徴について説明しよう。

人間中心設計(HCD)とは?

UX JUMPが定義する人間中心設計は、以下の文章で集約することができる。
“人間中心設計とは、ユーザーを中心において製品やサービスを開発する反復(PDCA)プロセスである”

ふむふむ。これだけ聞くと「ユーザーファースト」「ユーザー目線」「お客様第一」と言うキーワードが頭の中で思い浮かべる方も多いと思う。

だが、それくらいの感覚で良いのだ。むしろ、その感覚を大事にしながら、次項では人間中心設計(HCD)のもう少し具体的なプロセスを紹介していこう。

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人間中心設計(HCD)のプロセスとは?

人間中心設計(HCD)のプロセスは非常にシンプルだ。
ISO13407(2010年にJIS Z 8530に改定)にて規格化されている内容は以下の通り。

【1.利用の状況の把握と明示。】

  • ユーザーと組織の要求事項の明示。
  • 設計による解決案の作成。
  • 要求事項に対する設計の評価。どうだろうか?
    「何となく意味は分かるが…」と何とも歯切れの悪い理解になりそうではないだろうか。
    筆者も最初にこのプロセスの内容に目を通した際、みなさんと同じ心境であった。
    そこで、筆者なりに分かりやすい言葉にしてみたのが以下の通り。

【2.ユーザーが直面している問題を調査し、明確にする】

  • ユーザーは問題解決のために何を求め、企業はそれについてどう実現したいのか?を明確にする
  • 問題解決のための案(計画)を作成・実行する
  • 案(計画)を実行してみて、どうだったかを評価・改善

分かりやすくするとこのようになる。少しはイメージできただろうか?
UX JUMPではこれらのプロセスをPDCAで表現することが多いのだが、その方がビジネスパーソンには馴染みがあり、響きが良いのかも知れない。

デザイン思考とは?

デザイン思考を世界に向けて提唱し、数々のイノベーションを起こしてきたデザインコンサルティング会社IDEOはこのように定義しています。

「デザイン思考とは創造的な問題解決のためのプロセスである。」

一言読んで、”創造的”と言うフレーズに曖昧さを感じた方は、自身に問いかける答えとしてはベストアンサーだと思う。そう、“デザイン思考”そのものを知ろうとすると、出口のない迷路に迷い込んでしまうかのような感覚になる。出口が見つけられないとゲーム機のリセットボタンを押したくなるだろうが、それはまだ早い。

デザイン思考の具体的なプロセスを見ていただければ、なぜそんな希望的な意見を出したのか分かるはずだ。

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デザイン思考のプロセス

デザイン思考についての定義はとても曖昧であり、そのものの意味を理解するのは初見で難解な哲学書を読むようなものだ。
しかし、前途した通り、以下に記載するデザイン思考のプロセスをご覧いただければ「なるほど」と思うのと同時に「あれ?」と思うかもしれない。それこそが今回のテーマの真意になるのだが。まずは見てもらおう。

  1. 共感する
  2. 問題定義/問題提起
  3. アイデア創造
  4. 試作(プロトタイプ)
  5. テスト

…いかがだろうか?

5つに分類されたデザイン思考のプロセスを見て、何か感じないだろうか?勘の鋭い人、というか本記事を冒頭からしっかり目を通していただいた方なら気付いたかもしれない。そう、人間中心設計(HCD)のプロセスとかなり、というか同じプロセスに見えたのではないだろうか?

「今回定義した双方のプロセスは同じじゃないか」そう思っていただけたら、本記事の後半でその”違い”を語る意味があると言うものだ。

もったいぶらずに結論から説明したいところだが、それだと短絡的で内容が希薄に感じられるし、皆さん自身のなかでしっかりと理解できず、この”違い”について間違った解釈をしてしまう可能性があるからだ。

そうなると、今後、UXデザイナーとして活躍したいと考えている方、ビジネスや人生においてに人間中心設計やデザイン思考の活用を考えている方にとって非常に不利になる場合がある。

“人間中心設計とデザイン思考”。この二つは似て非なる属性を持ち合わせており、適正に使い分けをしないといけないのだ。
自分の部屋用にテーブルを買おうとカタログ、あるいはwebで調べる時、何を基準にするだろうか?机の高さ、幅などの大きさを基準に選ぶはずだ。当然のことだろうが、それは自分の部屋の広さを把握し、理解した上だからだ。

本テーマである人間中心設計(HCD)とデザイン思考についても同様のことが言える。それぞれ適する事案とそうでないのがあるということをしっかりと頭に入れておいてほしい。

それでは、次の項目では具体的にどういう”違い”があるのか?できる限り分かりやすく、皆さんに説明していければと思う。

 

そもそもHCDとデザインの思考に違いなんてあるの?

本記事の前半で、人間中心設計(HCD)とデザイン思考の概要とプロセスについてお話してきた。それぞれがどういうものか?何となくでも理解できたのなら充分だ。

ここでは、具体的にどう違うのか?を掘り下げていこう。前途したが、”違い”のみをこの場で説明しても本質が理解されないと、双方のメリットを活かせずに過ごしてしまうだろう。

料理の世界では、使う塩が岩塩か海塩か?それだけで食材の味を最大限引き出せるかどうかが変わってくる。和食では味に深みを与える白砂糖を使い、製菓では淡白な甘みで他の素材の味を邪魔しないグラニュー糖を使う。同じ塩や砂糖でも、中身の特徴はまるで違う。

今回の話も料理の世界と同じだ。一見似ていても、非なるものということ改めて分かっていただきたい。

話が逸れたが、筆者と共に本質の解明にコマを進めていこう。

 

もう一度それぞれのプロセスを比較してみよう!

まずは、改めてプロセスを比較してみよう。

【人間中心設計のプロセス】

  1. 利用の状況の把握と明示。
  2. ユーザーと組織の要求事項の明示。
  3. 設計による解決案の作成。
  4. 要求事項に対する設計の評価。

【デザイン思考のプロセス】

  1. 共感する
  2. 問題定義/問題提起
  3. アイデア創造
  4. 試作(プロトタイプ)
  5. テスト

この二つのプロセスには、明確に大きな違いが一つあるのをお気づきだろうか?人間中心設計のプロセスの方が、デザイン思考よりもスタートが具体的に決められている。
早速、見ていこう。

プロセスの「スタート部分」の違い

人間中心設計とデザイン思考の違いは、プロセスのスタート段階から違いがある。双方の内容詳細を分かりやすく説明しながら、比較し「どこが違うのか」を見つけていこう。

まず、人間中心設計のプロセスのスタート「利用の状況の把握と明示。」というのは、既存の製品やサービスの利用状況(どんな形で利用されているか?)を知るためにアンケートや観察、ヒアリングを行い、曖昧なデータではなく第3者が見ても明白な”リアルなデータ”を取り、明らかにしましょう。ということだ。

一方のデザイン思考のプロセス”共感”は、実に様々な捉え方があり、多様なメソッドが存在しているため、「これがデザイン思考でいうところの”共感”です!」と定義できるものはないのだが、このプロセスを通して、インサイト(潜在的欲求)や気づきを得ることが大事であり一番の目的だ。

UX JUMPで紹介している方法としては、ユーザーインタビューや観察が当てはまる。人々が本当に求めているニーズを炙り出し、それらを満たす画期的でクリエイティブなアイデアを創造し、サービスへと落とし込む第一歩となる重要なプロセスである。

【違いその①】
・人間中心設計(HCD)→客観的な数字やデータの正確性が大事
・デザイン思考→インタビューや観察を通して、内在する潜在的欲求や気づきを得ることが大事

ユーザーと組織の要求事項の明示と問題定義・問題提起の違い

データを得て次に行うプロセスが、そのデータを基にどういった問題が隠されているのか?または、あると考えられるのか?を見つける必要がある。人間中心設計でもデザイン思考でもやることは同じだが、ここでも明確な”違い”がある。

まず、人間中心設計における「ユーザーと組織の要求事項の明示。」について話をしていこう。「要求事項という言葉にユーザーが含まれているのはわかるが、組織って会社のことだよね?ユーザー中心なのに、なぜ設計側も含まれているんだ?」
筆者はそう思ってしまった。

この辺りの言葉の表現や意味の捉え方は少し複雑に感じる。ここでいう組織の要求事項とはユーザーの要求しているものに対し、企業として何を実現したいのか?ということだ。

例えば、あなたが洋食屋のシェフだとしよう。あなたの店へ一人の客がやってきた。ホールサービスが水とメニューを渡し、客の様子を伺う。客が熱心にメニューを見つめるページには肉料理が記載されているらしい。あなたはこの客に常連になってもらいたいので、美味しい肉料理を作ろうとするだろう。

今の例えをHCDのプロセスにあてはめてみると、客(ユーザー)が「肉料理を食べたい」という要求に対して、あなた(組織)は「自分の店の常連になってもらいたい」という実現したい目的・目標を明確にし、そのために美味しい肉料理を作る(設計)となる。組織の要求事項の明示を怠ると、あなたはただ肉料理を作るだけになってしまうだろう。

さて、デザイン思考の「問題定義・問題提起」についてはというと、ユーザーからのヒアリング・観察によりもたらされたインサイト(潜在的欲求)を基に、問題を再定義することとされている。

問題を再定義するには様々な方法があり、正解はない。しかし、重要なポイントはユーザーへのヒアリングや観察で得られた反応やパターンをより掘り下げていくことだ。「なぜ?」と問いかけていくことで、より本質に近くなり、「〜するにはどうしたらいいか?」を考えていくことでよりブラッシュアップを図る。そうすることで、次のプロセスである”アイデア創造”に繋がっていく。

ユーザーの潜在的なニーズを相手にしているため、このプロセスでは根本的な軌道修正が求められることがある。構築してきた課題を崩してしまうのは、苦虫を噛み潰したような顔になることもあるのだが、その柔軟性こそがデザイン思考の強みでもある。

この項目での双方の違いは、「ヒアリングや観察などでユーザーから得られた情報の精度や扱い方」である。

【違いその②】
・人間中心設計(HCD)→ユーザーから得られた正確なデータを基に目的・目標を設定する
・デザイン思考→数字やデータに捉われないユーザーのインサイト(潜在的欲求)を顕在化させていき、課題を浮き彫りにしていく。

これだけ聞くと、「デザイン思考の方が根拠がなく、適当にやっている感じがする」と思ってしまうのも無理はない。しかし、人間の潜在的なニーズは数字で測ることができない。

しかし、本記事の始めにもお話したが、HCDとデザイン思考の違いが分かれば使い分けができるのだ。
そう、HCDに向いている事例、デザイン思考に向いている事例があるということを忘れずに事項へ進もう。

h4「設計・評価」におけるHCDとデザイン思考の違い

ユーザーの要求が明確になってきたらいよいよ設計フェーズに入る、ここでもHCDとデザイン思考で違いがある。確認しながら見ていこう。

まず、HCDの「設計による解決案の作成」について。
こちらはUX JUMPでも解説しているのだが、簡単に言うと「ユーザーの要求するものにあった設計をする」ということだ。
そしてプロトタイプを設計できたらユーザーに試してもらい、改善点があれば評価してもらう。これがHCDでの四番目のプロセス「要求事項に対する設計の評価」にあたる。

改善があれば修正し、また試してもらう…というようにユーザーの要求が満足するまで繰り返していく。

デザイン思考はと言うと、「共感」でユーザーの潜在的欲求を抽出し、「問題定義・問題提起」で顕在化したのち、「試作」のためのアイデア創造のプロセスに移行する。この「アイデア創造」というプロセスはHCDにはない。そうはっきり申し上げてよいだろう。

HCDのプロセスはユーザーに対して忠実にプロセスを遂行する。ユーザーの要求を正確にデータを取り、ユーザーと企業の明確な目的・目標を決め、それらを設計図に構築する。そしてユーザーに試してもらい、改善点を修正し、より良くしていく。

しかし、デザイン思考は問題定義の段階で見つけた、ユーザーの要求に取り組むために、常識はずれな創造的なアイデアを出したりする。非現実的なアイデアも含め、質より量を優先しながらアイデアを出し合い、チームで話し合いながらさらに磨きをかけていくのだ。

こうすることで、誰も考えつかなかったような素晴らしいアイデアや方法が生まれ、大きな渦となってイノベーションにつながっていく。

アイデア創造を経て、「試作・テスト」へのプロセスにつながっていくのだが、この辺りはHCDと変わりはない。

【違いその③】

・人間中心設計(HCD)→ユーザーの要求に合わせたものを設計し、ユーザーに試してもらった評価を基に改善・修正していく
・デザイン思考→ユーザーの要求を基にチーム内で違った視点や発想を用いてアイデアを出し合い、磨きをかけていく。ユーザーの要求から「アイデア創造」により新たなアプローチから導き出されたアイデアを基に設計。ユーザーに試してもらい、改善・修正していく。

 

HCDは問題の改善に適し、デザイン思考は問題の打破に適している。

HCDとデザイン思考の違いはユーザーの要求を基にどう設計するか?というスタート部分から違っている。ユーザーの要求をデータとして正確に把握し、それらを基に忠実に設計を行い、課題解決を図るHCDのプロセスは既存のシステム改善をするのに適したプロセスであると言える。

それに対し、ユーザーの要求の先(潜在的欲求)を探ることで、誰も思いつかなかったような画期的なアイデアを創造し、イノベーションを起こすことで課題解決を図る革新的なプロセスは複雑化してきたげ現代社会の問題を解決することに適しているだろう。

「複雑な問題が解決できるのであれば、全部デザイン思考で解決できるのでは?」と思うかもしれないが、そう上手くほど世界は簡単にできていない。もちろん、HCDのプロセス・メソッドでこの世界が抱える問題や課題を解決できるかというと、これも難しい。

ではどうするのか?それはTPOに合わせてHCDとデザイン思考のプロセスを使い分けることが一番の最適解なのだ。どういう時にHCDデザイン思考を使い分ければ良いのか?ここからは事例を見ながら説明していこう。

 

事例で解説!HCDとデザイン思考、それぞれの有効なケースとは?

これまでHCDとデザイン思考について説明してきた。ここではハマるケース(成功事例)を見ながら、成功した点も合わせて解説していく。

「デザイン思考」が有効なケース

バンク・オブ・アメリカ – Keep the Change Program

アメリカを代表する金融機関の「バンク・オブ・アメリカ」が新規口座開設を増やすために行った成功事例を紹介しよう。ちなみに、この案件を成功へと導いたのはデザインコンサルティング会社であるIDEOである。

1.共感
様々な世帯や個人へのインタビューにより、家族のお金を管理するのはお母さんが多いことが分かった。さらに調べてみると、手書きで家計簿をつける際に金額の端数を切り上げていることがわかった。
端数を切り上げることで計算もしやすくなり、支出額を少し多く見積もることで、必要以上な支出おを抑える役割もあると分かった。

2.問題定義・問題提起

新規口座開設をふやすためにはどうすれば良いのか?
端数を切り上げることで、支出を抑えるようにするのはなぜか?
家計簿につけなくても端数を切り上げる方法はあるのか?

3.アイデア創造

端数を切り上げた金額を貯金できるシステムができないか?

 

4.試作・テスト

バンク・オブ・アメリカの口座をデビットカードに紐付けるとカード支払いの引き落とし金額の端数を自動的に切り上げ、その差額分が貯金されていくサービス、「Keep the Change Program」が生まれた。

【この事例が成功した点】
数値や割合などの明確なデータで集計・分析する定量調査ではなく、ユーサーの潜在的な意識や動機などを基にした定性調査を行なったこと。仮に定量調査を行なっていたとしたら、膨大なデータ収集と分析にいくら時間があっても足りず、プロジェクトが頓挫していた可能性もあったかもしれない。

 

「HCDプロセス」が有効なケース

レミパンプラス

レミパンは2001年に発売。以降、細かい仕様変更はあったが、ユーザーから多くのリクエストが寄せられていた。キッチンブランド「remy」の立ち上げをきっかけに、新型レミパン「レミパンプラス」の開発をスタート。

1.利用の状況の把握と明示。
ユーザーを対象に「レミパンの好き所/嫌いな所は?」「改善して欲しいことは?」など、様々な角度からリサーチを行った。

2.ユーザーと組織の要求事項の明示。
調査の結果、ユーザーが求めているものが「調理性能の向上」「利便性の向上」「シンプル」だと分かった。企業はユーザーの要求に合わせたプロダクトを行い、ユーザーのリクエストに応えることを実現したい。

 

3.設計による解決案の作成。
ユーザーが求めている「調理性能の向上」「利便性の向上」「シンプル」を基に設計。

4.要求事項に対する設計の評価。
評価を行い、改善を修正し再設計を繰り返し、約3年の月日をかけて「レミパンプラス」が完成

【この事例が成功した点】
ユーザーを対象に、様々な角度からアプローチした調査の精度が高かったため、明確な改善点が挙がったことだろう。

まとめ

人間中心設計(HCD)とデザイン思考の違いについてここまで解説してきた。

HCDもデザイン思考どちらも、「ユーザーが求めているものはなんなのか?」というのがプロセスのスタート部分であり非常に大事なポイントだ。そのためにはインタビュー、ユーザーリサーチ、マーケティングリサーチ、などのユーザーから情報やニーズを引き出す方法を勉強しておくことで設計までのプロセスがぐっと縮まるはずだ。

重要なのは、今回HCDとデザイン思考のプロセスについて、一連の流れでお話したが必ずしもその限りではない。「設計」のプロセスで行き詰まった場合は「ユーザーの要求」を見直すためにスタート段階である「共感」に戻ることもあるだろう。
あくまでプロセス厳守ではなく、プロセス重視ということを念頭に置いてこれからのUXデザインに役立ててほしい。

 

カスタマージャーニーマップの簡単な作り方と本当の目的|完全版

皆さんは、今までカスタマージャーニーマップなんて作らなくても、良質なサービス提供できているし、マップを作ったところで何がわかるようになるの? それに素人には作れないんでしょう?と言ったような感情になったことはないでしょうか?

おそらく、このようなこのような疑問をもつ方々は多いのではないだろうか?ということでまとめさせて頂きました。

そこで、いきなりカスタマージャーニーマップを作成しようとすると、後々誰のためにやってるのだろう?と行き詰まってしまうことがよくあります。

   

まずはUXを改善するための、ペルソナを定義するところから始めましょう

事業やサービスを考える際、ユーザーインタビューを実施してペルソナを作ることで、ユーザーのリアルな人物像を可視化することができます。

ペルソナについて詳しく知りたい方はこちらもご参照ください。


ここからが本題です!
このペルソナだけでは、ユーザーがサービスを認知してから、どのように決断をして、契約や購入に至ったのか?という、ユーザーの行動と感情の変化を把握することができないという課題が出現します。


ここで登場するのがカスタマージャーニーマップです。これはユーザーの行動と、その感情の変化を時系列でまとめることを目的とした一覧表(サービスとの旅路)です。ターゲットユーザーとして策定したペルソナが、どのような行動をして、何を感じているかを時系列に沿って見ていきます。

今回はカスタマージャーニーマップを知ってる方にも、知らない方にも、楽しんで頂けるよう、目的や作り方のポイントをご紹介ていきたいと思います。

カスタマージャーニーマップとは?

顧客の行動と思考を図式化したものという整理をしています。少し難しく聞こえるかもしれませんが安心してください。

サービスに対してユーザーは、「認知・興味・検討・購入」などの様々な行程を通ります。その中で起こりうる行動や、それに紐づく感情・思考・不満(課題)の動きを時系列にまとめたものをカスタマージャーニーマップと呼んでいます。


サービスに対するユーザー行動の全体像を可視化することで、今まで検討していなかった顧客との新たなタッチポイントや課題を発見し、適切な「体験・情報・機能・気づき」を届けることができるのです。

    

カスタマージャーニーマップを作る目的

カスタマージャーニーマップを作る目的は以下の3点が上げられます。

  • ユーザーの「行動・感情・思考・課題・解決策(アイデア)」を時系列に沿って流れを捉えることができる
  • チームで共通認識を持つことができるので、施策に一貫性が出る
  • 課題の優先度を明確化することができる

【1つ目】の目的は、ユーザーの行動・感情・思考・課題・解決策(アイデア)を時系列に俯瞰して捉えることができるためです。

これにより、「〇〇という機能は、ユーザーにとって本当に必要なのか?」さらに、「この機能は的確にユーザーに提供されているのだろうか?」など、今まで考慮していなかったユーザーの課題を新たに発見し、その解決策を検討することができます。

発見するために有効な手段は「ユーザーインタビュー」をすることです。これはユーザーの視点からサービス全体を見直すことが可能だからです。

【2つ目】の目的は、カスタマージャーニーマップを作ることで、関係者全員でサービスの現状の共通認識を持つことが出来ることです。

作成する際は「エンジニア・マーケター・カスタマーサクセス・営業サイド・お客様」など組織を横断して巻き込むことで、施策の立案・検討がスムーズになり精度が高くなります。

3つ目】の目的は、カスタマージャーニーマップを作ることで、時系列に沿ったフェーズの課題を抽出し、それぞれの課題の緊急度・重要性を比較することができます。

これにより、解決すべき課題の優先度を明確にし、サービス改善のスケジュールを改めて見直すことができます。

    

カスタマージャーニーマップの作成

インタビュー、ユーザーリサーチ、マーケティングリサーチ、などを経て、ペルソナを定義したら、カスタマージャーニーマップで、その体験を可視化し時間軸で追えるようにしていきます。


そこでまず、カスタマージャーニーマップを作るために必要なのは、何と言っても「ユーザーの行動・感情・思考・課題、を引き出すユーザーインタビューやユーザーテスト」が有効的です。

なぜかと言うと「この機能を使っているとき、何を考えているか」「機能全体を通して、どこが一番テンションが上がったか」「使いづらいと感じたポイントはどこか」などの感情・思考・不満(課題)の変化や、無意識的にやっている行動や言動を拾い集めることが出来るからです。これらを参考に、カスタマージャーニーマップを作成していきます。

詳しいユーザーインタビューの方法はこちらを参照してみてください。

http://www.standardinc.jp/reflection/article/ux-how-to-conduct-user-interview/

こちらは、カスタマージャーニーマップの一例です。
【参考サイト】https://webtan.impress.co.jp/e/2014/03/24/16722

最上部では、ユーザーがサービスと関わる「段階(フェーズ)」を時系列で表しています。縦軸には、ユーザーの「タッチポイント・行動・思考(感情)・データ・課題・解決策」などの項目を並べていきます。

これらの横軸のフェーズと縦軸の項目は、サービスやプロジェクトによって異なりますが、実際のユーザー行動のリサーチ結果からフェーズを定義したり、それに伴う要素として、縦軸に必要な項目を見極めるのが大切です。

例えば、上記のあるウェブキャンペーンを想定したカスタマージャーニーマップを考えてみましょう。この場合、ユーザーがキャンペーンに興味をもつきっかけから、情報収集をしてキャンペーンサイトを閲覧し、実際に参加するまでのフェーズがあります。そして各フェーズで、「タッチポイント・行動・感情・課題・解決策」を策定します。

「感情」を言語化する時に、「感情曲線」を加えると、より分かりやすいカスタマージャーニーマップになるのでぜひ試して見てください。「感情曲線」とは、テンションが上がる・嬉しい・楽しいなど感情がワクワクした場合に曲線が上昇し、ストレス・面倒臭いなどマイナスな感情の場合は曲線が下降します。

ユーザーの一連の感情の変化を、曲線とイラストの表情で表すのです。これにより、文字だけではなく視覚的に感情の上がり下がりを一目で理解することができます。

このようにカスタマージャーニーマップを作ることで、それぞれのフェーズでのユーザーの感情の動きや、それに対する課題点、解決策を俯瞰的にまとめることができます。

UXを改善させる為に必要なカスタマージャーニーマップの作り方のポイント

ここではUX(ユーザーエクスペリエンス)を改善させるための、カスタマージャーニーマップ作成ポイントをご紹介します。

【1つ目】のポイントは、一人で作らないことです。
サービスに関わる多くの方々を巻き込んで作ることで、プロダクトマネージャーが考えるユーザー行動、UI/UXデザイナーが考える課題、エンジニアが考えるアイデアなど、それぞれの異なった視点と答えを持っているからです。

また、クライアントのサービスのメインターゲットについて一番知っているのはクライアント自身。社内や社外のメンバーを問わずに、多くのステークホールダーを巻き込むことで、より合意形成の取りやすいカスタマージャーニーマップに仕上がります。

【2つ目】は、ミーティングなどでカスタマージャーニーマップを考える際、色つきの付箋紙を使うことです。「行動」「思考・感情」「背景にある価値」「課題」といったように、ジャンルごとに付箋の色分けをすることで、視覚的に情報を整理しながら話を進めることができるのでオススメです。

簡単に作成するための「5ステップ」

1. 企画立案
ウェブサービスの機能・コンテンツ検討、キャンペーンなどの企画

2. 5W1H分解
ユーザーの体験を5W1Hに分解し、利用シーン毎の行動や気持ちを想定する

3. 定量調査/定性調査
5W1Hの想定のうち不確かな体験の状況をユーザーから引き出し、具体化する

4. ラフマップ化
調査データをもとにメンバーで議論し、ユーザー行動の文脈やモデルを明らかにする

5. マップ化
AS-IS(現状)の行動モデルをマップ化し、関係者との共有・合意形成の場で利用する

このように、カスタマージャーニーマップの作成は、自社または競合など含めた「商品・サービス」やウェブサイトの「利用前・利用中・利用後」の行動文脈を、5W1H化して調査することから始めてみると、意外と簡単に外化することができるのでオススメをしてます。

まだ作成した経験がないという方には、こちらの動画がオススメです。

【フレームワーク解説シリーズ】カスタマージャーニーマップの書き方を現役起業家が解説します!

まとめ

カスタマージャーニーマップを作成することで、ユーザーが課題と感じている時に裏ではどんな行動をしているか、ストレスになる課題は何かを明確にすることができます。

それらを可視化し、チーム全員で共通の認識を持つことで、課題に対する施策検討をよりスムーズに行うことができるのが利点です。カスタマージャーニーマップでユーザーの行動・感情の全体像を把握し、サービス改善や立ち上げに役立ててみてはいかがでしょうか?


ペルソナ作成の極意|リアルなユーザー像が見えてくる

ペルソナとは?

どのようなサービスづくりにおいても、届けるユーザーを定めることはとても重要だ。

多くの情報があふれる中で、ユーザーは自分が使いたいと思うサービスを自ら取捨選択している。

また、ユーザーに自分たちのサービスを選んでもらうためには、彼らの悩みを解決することが不可欠であり、そのために、ユーザーの「悩み」や「課題」を明確にするのが「ペルソナ法」だ。

自社サービスの顧客像について話をする場合、「ターゲット(Target)」と「 ペルソナ (Persona)」という2つの単語が混じってしまうことはないだろうか?

まずは、「ターゲット」と「 ペルソナ 」は全く別物であることを言葉の意味から理解しておこう。

  • Target(ターゲット):想定ユーザー、標的、まと(的)
  • Persona( ペルソナ ):サービス全体の体験に登場する人物の“人格”  

    

Target(ターゲット)

一言で表現すると、「標的のステータスをまとめたもの」を指す。

  • 年齢
  • 性別
  • 住んでいる場所仕事(仕事内容、役職)
  • 生活パターン(起床時間、通勤時間、勤務時間、外食派or自炊派)
  • 最終学歴
  • 価値観
  • 配偶者の有無
  • 家族構成
  • 人間関係
  • 収入

上記のようなステータスをまとめることで明らかになるのは、サービスのターゲットユーザーが、「こんなステータスの方々」「こんな生活を送っている」というような、”How(どのように)”を突き詰めるだけであれば最適だ。

しかし、肝心な “Why(なぜ)” を抽出することは難しいため、ペルソナを本質的に理解し設定できるようにすることが重要になってくる。

    

Persona( ペルソナ )

まずは、世の中でよく見るペルソナシートの例を見ていこう。下画像のようなまとめを見た人は多いだろう。

この「シート」だけを見て、本当に人格や感情を理解することができるだろうか?私は占い師や心理学者だとしても難しいのではと思ってしまう。

しかし、良質な例も存在する。以下のGoodpatchブログで紹介されているペルソナについての考察は、抽象度の高い人の人格や感情を、具体に落とし込んでいくことをセットに語っている。

結論、”シート”を作成するだけでは“ペルソナを設定”することは非常に難しい。しかし、現在でもこのように”シート”を作ることが目的になっている企業を見ることが非常に多いのが現状だ。

    

なぜペルソナを設定するべきなのか?


「想定しているユーザー像の認識を関係者各位で合わせるため」

商品やサービスを企画して実際に販売していくには、企画担当者はもちろん、経営陣、マーケティング担当、営業と様々な担当者が関わっていくことになる。

担当者間でターゲットイメージがずれてしまうと、議論が思うように進まなかったり、伝えるべきイメージまでずれてしまうということになりかねない。

その結果、本来の目指すべきゴールやユーザーニーズを満たすことができず、全体的に方向性がずれたまま進めてしまうことになる。

逆にこのペルソナを初めにしっかりと作成し、担当者全員で共有することによって、同じ人物像をイメージしながら話を進めることができ、意思決定のスピードも上げることができるだろう。

     

ペルソナを設定するメリット

ユーザーのニーズを汲み取ったサービス設計ができる

まず、ペルソナの設定は、情報やデータを用いて作成されるため、ユーザーを理解することにつながる。

企業やブランドは、自社の商品やサービスの性能の良さや伝えたいことを一方的に発信してしまいがちだが、具体的にペルソナを設定することで、ユーザー目線での商品・サービスの設計ができるようになる。

顧客になり得るユーザーが、どんな時に貴社の商品やサービスを使いたいと思うのか、どのような機能やビジュアルであれば好まれるかなど、ユーザー側からの目線で考えることでより、市場価値の高い商品やサービスを生み出すきっかけにもなる

クライアントや現場など意思統一を図ることができる

クライアントと一緒にペルソナ設定を行うと、想定しているペルソナをベースに深く話し合うよい機会にもなるだろう。

さらに、クライアントとこちらの考えのズレを明確にすることもできる。そのズレをしっかりと修正することで、意思統一の解像度を上げていくことができる。

      

ペルソナの作り方のポイント

1.ペルソナにするべきユーザー像を定める

まずサービスのターゲットユーザーは「どのような人物か」「どのような感情を抱いているのか」「普段どのような行動をしているのか」を知ることが重要だ。

さらに、「生活スタイル」「どのような悩みを持っているのか」を知るために、ターゲットユーザーになりうる人のリサーチをオンラインやオフラインで実施していくことが大切だ。

例えば、BtoB向けSaaS系サービスのターゲットユーザーを考える際、「社内オペレーションについて、どのような悩みを持っているか」や「誰のどんな影響で意思決定のフローが構成されているのか」などユーザーの悩みや実際に現場の実例をリサーチしていく。

これらのリサーチを元に、以下のような大まかなターゲットユーザー像を作っていく。

    

2.リサーチ・インタビューを繰り返す

まず 、ペルソナを作るとき、その人物が実在しているかのように、年齢・性別・居住地・職業・年収・趣味・思考・ライフスタイル・行動スタイルなどリアリティのある詳細な情報を設定し、リサーチを繰り返していく。

ここでは、ターゲットユーザー像に近いインタビュイーを見つけるために、まずはオンラインアンケートで手軽にインタビュイーを絞り込むことが出来るのでおすすめしたい。

UX JUMPではGoogle フォームのアンケート機能を活用して、インタビュイーを策定することが多い。Googleフォームは、さまざまな形式の質問を作成でき、画像や動画の挿入も可能だ。アンケートの回答結果は自動的にフォームに集計されるため、回答者の情報を簡単に整理できる。

このようなリサーチを繰り返し、大まかなターゲット像が見えてきたタイミングで、よりリアリティのあるペルソナ像に近づけるため「ユーザーインタビュー」を実施していく。



3.感情や行動もペルソナシートに記載する

リサーチやインタビューを繰り返し実施したら、それらの情報を整理しペルソナシートにまとめていく。

ペルソナシートとは、ユーザーインタビューで得た情報を統合して作り上げた架空の人物のプロフィールであるため、なるべく具体的に人格化していくことをおすすめする。

サービスと接点を持っている際の、ユーザーの人格や感情などもセットで記載することで「こんな人」という共通言語の解像度がグンと上がる。

UX JUMPで作成した、BtoB向け発注サービス(発注者側)のペルソナシートを参考までに添付しておく。

    

4.認識の共有

UX JUMPではペルソナを作る際、1番大事だと考えているフェーズだ。なぜかというと、「こちらが、このサービスのペルソナです」と1度聞いてしまうと、それが正解だと考えてしまう方々が少なからず出てくる。

悪いことではないが、なかなか1度耳にしたペルソナイメージから離れることは難しいため、慎重に関係者に周知することが大事だ。

関係者で共通認識を持つためには、やはり”紙切れ1枚”では必ずといっていいほど、認識のズレが生じる。

そこで、UX JUMPではペルソナをストーリーで伝えることを推奨している。この「ストーリーペルソナ」だが、言葉だけではイメージしづらいと思うので、筆者が作成した、BtoB向け受発注サービスの受注者側(仕事を増やしたいWEB制作会社や開発会社)のストーリーペルソナを添付しておく。

    

5.1度作成したら終わりにしない

このようにぺルソナの作り方には、様々な方法が存在するため、臨機応変に変更して行かなければならない。そのため都度アップデートをし、関係者やユーザーを巻き込んで「育てていく」という意識が重要だ。

    

まとめ

ペルソナの重要性は、関係者との焦点を定めることに大きな助けになってくれるということだ。

例えば、ピントの合っていない”双眼鏡”を覗いていたとしても目標物が見えないように、ペルソナでも同じことが言える。

常に、時代の変化や感情の変化に対応していくため、定期的にペルソナを見つめ直し、サービスが提供すべきペルソナを見失わないことが重要だ。

「デザイン思考」の正体とは|デザイナー以外も正しく理解すべき全知識

デザイン思考 (Design Thinking) の定義

早速だが、デザイン思考の定義を確認してみよう。

Wikipediaによると、デザイン思考の定義は下記の通りだ。

デザイン思考とは不明確な問題を調査し、情報を取得し、知識を分析し、設計や計画の分野でソリューションを選定するための方法およびプロセスを指す。

この説明で理解できた人は、この記事をそっと閉じてほしい。

私にはさっぱり分からない。恥ずかしいことに、何を、どのように理解すればいいのか整理すらつきそうにない。

私と同じように、Wikipediaの内容が理解できない方向けに、 ” 誰でもわかる「デザイン思考」の考え方”を、事例を交えながら解説していきたい。

“デザイン思考”と”デザイン”の違い

まず、デザインするという行為は、デザイン思考のごく一部に過ぎないことを理解してほしい。

最も重要なのはデザイン的プロセスを通し、どのような問題に対してもクリエイティブなアプローチ活用して解決しようとする”考え方”だ。

デザイン思考という考え方は、

  • いかなる種類のビジネスにも活用可能
  • いかなる部署/役職においても活用可能
  • スタッフ全てがそのプロセスに参加可能

であるため、決してデザイン会社やデザイナーだけのものではない。

優れたデザインとは、視覚的要素を多く含むグラフィックや造形だけでなく、世の中の問題点や課題を明確にして、ユーザーが使っていて心地いい解決策を導きだすことだ。

ある意味では、医者やコンサルの仕事に近いと認識することが重要だ。 

“デザイン”という言葉の裏に隠されたあまり知られていない定義

ちなみに、”デザイン”という言葉には大きく分けて2つの意味があるのを知っているだろうか?

通常グラフィックデザインやWebデザインなど多くの場面で使われるデザインの意味は、絵を起こしたり、色をぬったりと、いわゆるデザイナーが行うクリエイティブな行為を指す。

一方、”デザインする”という動詞の意味の中には、”新しい機会を見つける為の問題解決プロセス”という定義が含まれる。

「使っている人=ユーザー」「これから使いそうな人」が、抱えてる問題に対して“解決する”というプロセスで取り組むことで、今までには考えつかなかった新しいチャンスが見えてくる。

それが“デザイン思考”という考え方(アプローチ方法)が生み出す大きなメリットだ。

課題解決を現実の世界に落とし込んでいくためには、抽象的なユーザーからのフィードバックから少しずつ現実的なプランに落とし込み、最終的には全く新しい創造(アイデア)を生み出す。

それでは具体的に事例を元に、そのプロセスを見ていこう。

デザイン思考のプロセスを解説

デザイン思考は、これからご紹介する5つのプロセスに沿って展開される。

このプロセスを繰り返し行う事で、製品やサービスを今よりも「使いやすい」「心地いい」というところへユーザーを導いてあげる思考だ。

  1. 共感
  2. 問題定義・問題提起
  3. アイデア創造
  4. 試作(プロトタイプ化)
  5. ユーザーに向けてテスト

STEP1:共感

まず、”デザイン思考”という考え方の中心には「人間中心設計」を原則としている。ここでの「共感」は、人々(ユーザー)を深く理解するということを指す。

人間中心設計(HCD=Human Centerd Design)は、製品やサービス・ウェブサイト・アプリなどを開発する際に、プロダクトを使用するユーザーの使いやすさを中心において設計する考え方だ。

プロダクトの開発側が提示した使い方に人間が合わせるという従来の考え方を離れ、使う人の観点でストレスなく使いやすいデザインを追及する

また、ユーザーの利便性を高めて満足度を高めるだけでなく、プロダクトが使いやすくなることでサポートコストが軽減されるなど、企業側にとっても恩恵がある考え方だ。

このプロセスは気づき、インサイトを得る事を目的としている。

人々が『なぜ ・どのように 』 行動するのか、そしてニーズは何なのかを、インタビューや観察などを通して探っていく。

そこから、人々が本当に求めている事を見つけ出し、今までに企業側からは見えなかった「気づき」を”アイデア”に変えてサービスに落とし込む準備をしていくという考え方だ。

ターゲットを観察し、ターゲットの事を理解していくが、ここで大事なことは、マインドにもある常にユーザーの視点に立つことを意識し、背景や課題を見えるようにすることだ。

具体的にはユーザーインタビューやユーザーテストを繰り返し、コンセプトやアイデアの精度を上げていくことがおすすめだ。

  • ユーザーインタビュー
    観察/共感のフェーズにおいて、ユーザーの潜在的なニーズを見つけるために有効な手段がユーザーインタビューだ。ユーザー中心のデザインをするためにもインタビューは非常に重要だが、ユーザーインタビューは、ただ話を聞くだけではなく、相手も自覚していない課題を対話から引き出す事が求められる。解決するべき課題をしっかり特定するためにも、事前準備を怠らないように注意が必要だ。

<参考>

ユーザーインタビューの価値とは?良いインタビューを実施するために抑えるべきこと

STEP2:問題定義・問題提起

ユーザーインタビューなどで観察を行うことで、「ターゲットが困っていること」や「なぜ困っているか」が明確になる。

このフェーズでは、さらに掘り下げた観察と問題定義を繰り返しながら、コアとなる課題を見つけ出そう

ケースによっては「そもそも観察対象が違うのではないか?」といった、根本的な軌道修正が求められる場合もある。

固まりかけている仮説を壊すことは勇気が必要だが、すべてはユーザーがこれまで以上に”優れた体験”が出来るようにするためだ。

ここで大切なのは、チームメンバー全員の意識にぶれがないように、最終的な形をゴールやコンセプトを具体的に定義しておくことが重要だ。

︎STEP3:アイデア創造

「問題定義」で設定された方向性を実現するために、アイデアを出すのがこの「アイデア創造」のステップだ。

どんなアイデアがユーザーに受け入れられるか、思いつく限りのアイデアを発散しよう。現実性は加味せず、とにかく発散することが重要だ。

この後のプロトタイピング、検証で、徐々にコアの問題解決になるアイデアが見つかってくる。

発散したアイデアを決定および検証する際は、仮説をより具体的にする事がここでは重要だ。

STEP4:試作(プロトタイプ化)

アイデアが出たら、検証するためにすぐにプロトタイプを作成しよう。

実際にプロトタイプを作成することで、アイデアがより具現化でき、イメージが湧きやすくなってくる。

プロトタイピングツールを使えば、口頭では伝えきれないアイデアを再現できるので、ユーザーテストや、提案プレゼンの際に説得力が増す。

結果的に裁量がある上長の承認をもらいやすくなり、プロダクトづくりにおける意思決定がスムーズになる。

また、プロトタイプを作成することで、開発メンバーが技術的な実現可能性をはかることが可能になる

︎STEP5:ユーザーに向けてテストをする

「試作」段階で作成したプロトタイプについて、ユーザーテストを行うのがこのプロセスだ。

プロトタイプが出来たらそれで終わりではない。ここからターゲットに向けて検証・改善を繰り返し、試行錯誤しながら、最終的にクオリティの高いアウトプットを目指していく。

検証すべき項目が増えてきてしまった時は、仮説に優先順位をつけることが重要だ。

検証のタイミングは一度きりではないため、優先度が高いものから低いものまでバランスよく分類し、検証・改善のサイクルを小さく早く回すことで、精度が高まっていく。

これを繰り返す事で、商品やサービスのブラッシュアップを行うのだ。

日本や海外でのデザイン思考の活用事例

実際にデザイン思考を活用して製品化されたものを紹介しよう。

海外での事例 「iPod」

米アップル社が開発した携帯型のデジタル音楽プレイヤーだ。実はこの製品も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品なのだ。

それでは、デザイン思考のステップに沿って見てみよう。

STEP1:共感

まず、競合製品の分析や、ユーザーが実際にどのように音楽を聴くのか等の調査を行った。

そこで、ユーザーがCDからPC、そしてプレイヤーへ音楽データを移行する事を手間だと感じている事が分かった。また、「その場で選んだ音楽を、どこに居ても聴きたい」というニーズも併せて発見した。

STEP2:問題定義

「共感」のステップで発見されたニーズにより「全ての音楽を、ポケットに入れて持ち運ぶ」「音楽の聴き方に革命を起こす」というコンセプトが確立した。

    

STEP3:アイデア創造

まず、円盤型のマウスによる画面操作、そしてiPodとPCのデータを自動で同期させるシステムなどの、全く新しいアイデアが生み出された。

   

STEP4-5:試作・テスト

こうしたアイデアを盛り込んだ試作品について、スティーブ・ジョブズは「音楽を聴くために3回以上ボタンを押したくない」「もう少し本体を小さく」「音量を大きく」「音質をシャープに」「メニュー表示を素早く」など、

度重なる要請を出し、試作・テストが繰り返された。

こうして2001年に発売されたiPodは、5年半で累計販売台数1億台を超える世界的大ヒット商品となった。   

日本企業のイノベーション事例 「任天堂Wii」

任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品だ。Wiiの開発過程を、デザイン思考のステップに沿って見てみよう。

STEP1:共感

まず自社の社員の家庭について調査し、「ゲーム機は親子関係を悪化させる原因となっている」「ゲーム機があると、子どものリビング滞在時間が短い」という状況に気づいた。

   

STEP2:問題定義・問題提起

「共感」で得られた気づきから、「家族で楽しむ事ができ、かつ親子関係を良くするゲーム機の開発」という方向性を設定した。

    

STEP3:アイデア創造

開発チームにより様々なアイデアが創出され、例えば「家族みんなで使えるゲーム機」「リモコンのようなコントローラー」「リビングで場所をとらないコンパクト設計」などの案が出された。

   

STEP4-5:試作・テスト

これらのアイデアを元に徐々に形になり、重さ・形状・操作性などの様々な点を考慮し、1,000 回以上の試作が繰り返された。

こうして2006年に発売されたWiiは、最終的に販売台数1億台を超える、国民的家庭用ゲーム機となった。

    

デザイン思考が注目される背景

これまでの課題解決方法

これまで、新たな製品やサービスを生み出す現場では「マーケティングリサーチ」が重要視されていた。

それは「仮説検証型」のアプローチであり、市場やニーズについて調査した結果を分析し、仮説を立て検証し、それを元に製品開発などを行ってきた。

このマーケティングリサーチを実施するためには、事前にある程度正確に問題を把握している必要があるが、ニーズが多様化し変化の激しい現代では、この「仮説検証型」で問題の本質を捉える事が難しいケースも増えてきたのだ。

     

VUCA時代の到来

    

  • Volatility(変動)…変化の質・大きさ・スピード等が予測不能であること
  • Uncertainty(不確実)…これから起こる問題や物事が予測できないこと
  • Complexity(複雑)…数多くの原因などが複雑に絡み合っていること
  • Ambiguity(曖昧)…物事の原因や関係性が不明瞭であること

の頭文字を取った言葉です。これは、現代の世界経済環境がこれら四つの要員によって極めて予測困難となっている状況を表す言葉だ。

このような時代の到来により、人々のニーズなど課題の本質をスピーディーに分析できる方法が求められるようになった。

そこで、ユーザー中心主義であるデザイン思考が注目されているというわけだ。

   

サイクルの加速化

昨今の経済状況は「変化が激しい時代」と言われています。産業の多くは成熟し、それにより技術が発展、製品サイクルも加速している。

併せて消費者の購買行動も多様化した事により、より変化と競争の激しい時代となった。

そのような環境において、チームメンバーとのコミュニケーションを重視し、仮説・プロトタイプ・検証をスピーディーなサイクルで回す事のできる「デザイン思考」が求められている。

    

第4次産業革命

欧米では、製造業をインターネットと人工知能を利用して自動化する動きが加速化しているが、これは、工場の生産性や効率の飛躍的なアップを狙ったものだ。

この「第4次産業革命」により、社会構造そのものの変化が予測される。

そのような変化の中で、これまでの価値観にとらわれない課題解決の方法が求められており、これからは、自ら課題を設定し市場を生み出せなければ、大きなビジネスチャンスは手に入れられない。

そこで、イノベーション創出に長けた「デザイン思考」が注目されているのだ。

      

デザイン思考の効果(期待できること)

それでは、デザイン思考を行う事によって、どのような効果が期待できるのか。

新しい発想を生み出す

デザイン思考の最大の効果は、イノベーションの創出であると言える。つまり、これまでの延長線上ではない、全く新しいアイデアが生まれやすいということだ。

デザイン思考は人間中心設計の考え方であるため、これまでの市場を中心としたアプローチではなく、人々のニーズからその課題の本質を見極める事ができる

    

強いチームを作る

デザイン思考は、チーム間のコミュニケーションを重視し、その思考のプロセスにおいて全員が発言権を持ち、アイデアの重要度も平等に扱われる。

メンバーの役職や上下関係に左右されない意思決定のプロセスにより、積極的なアイデア創出のマインドが醸成されるのだ。    

まとめ

最も重要な要素は「人の深層心理を知ること」

イノベーションの歴史でわかりやすい例は数十年前の、T型フォード車の発明だ。

まだ車がなかった時代、人々の交通手段が馬車だった時、人々に「次に何が欲しいですか?」と問いかけたら、「もっと早い馬が欲しい」という答えが返ってきただろう。

一方で、ユーザーの深層心理には「A地点からB地点までをより早く移動したい」という欲求があったはずだ。

そのポイントを明確に追求する中でフォード社は自動車という発明を生み出すことができたのだ。

デザイン思考とは、当時のフォード社の考え方と同じで、人々が求めるものの深層心理を理解して、新しい技術とコラボレーションしながら世の中をリデザインすることにほかならない。

UXとUIの違いがスッキリわかる|専門家が事例をもとに解説

UXとUIの違いが本当の意味で理解していない人は非常に多い。

それは『UX』や『UI』という言葉と接したことのあるビジネスパーソンだけではなく、UX/UIデザイナーと称する人もそうだ。

UXとUIの違いを言語的に理解するだけでは、本当の意味で違いがしっくりこないと考えているため、この記事を通してUXとUIの違いを体験していただきたいと考えている。

分かりやすく理解してもらうため、以下の流れで進めていきたい。

  • UIとUXの違いをわかりやすく解説
  • UI⇒UXの順で事例を交えながら紹介

それでは早速、UIとUXの違いを紹介したい。

UIとUXの違い

UIとUXの違いは以下のように紹介されることが一般的だ。

「そんなことは知ってるよ」という人は多いと思うが、実感をともなっている人はどれくらいいるだろうか?

早速、体験してみよう。

この文章を読んでいるということは、スマホかPCを見ていると思う。

スマートフォンのUIとUX

“UI”は、今まさにあなたが触れている「この瞬間・瞬間」の画面(インターフェイス)から得られる情報を指す。

“UX”はというと、説明が複雑なので立ち止まってもらうため、ひとつ質問をしたい。

質問

「あなたはそのスマートフォンをなぜ購入しましたか?さらに、なぜ今も使い続けているのですか?」

考えていただけただろうか?

その理由における感情や体験こそが、UXの正体だ。

UXはUIと違い「見つけた瞬間〜使い続けている現在まで」の感情や体験全体を指す。

例えば、

  • 「気がついたらストレスなく使えるようになっていた」という体験
  • 「このスマホで撮影した写真には思い出がたくさん詰まっている」という感情
  • さらに、「次はどのスマホに買い換えよう?」という感情

といったような感情や体験のすべてを包括するのがUXだ。

以上のようなことを簡単にまとめると、

UI(User Interface)によって変えられるものは『人間が機器を見たり、触れたりしたとき、その瞬間の感覚』だ。

一方で、UXによって変えられるものは『サービスをつかうコトによって「嬉しかった!」、「使って良かったぁ!」とか「めっちゃ便利だった!」という感情』だ。

UI(ユーザーインターフェイス)とは

UI設計の具体例

インターフェイスと聞くとWebサイトやアプリなどの画面そのものを想像しがちだが、実は、インターフェイスはそれにとどまらない。

人間の目とモノを繋ぐ対象が何かによって呼び名が変わり、大きく分類すると、3種類になる。

  1. 人間とモノを繋ぐ、ハードウェアインターフェイス。(洋服、メガネ、椅子 etc)
  2.  ソフトとソフトを繋ぐ、ソフトウェアインターフェイス。(API etc)
  3. 人間と何か (主にデバイス) を繋ぐ、ユーザーインターフェイス (UI)

よく言われているのが、3番目の人間と何か (主にデバイス) を繋ぐ、ユーザーインターフェイス (UI) が代表格ではあるが、整理してみると

  • 「U=ユーザー」×「I=インターフェイス(モノそのもの)」

なので、洋服もメガネもインターフェイスの一部であると整理できる。

例えば「メガネ」であれば、メガネそのものがインターフェイスであるという整理をすると分かりやすいだろう。

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは

「メガネ」でUXデザインを例えると、

目が悪いと感じた瞬間(Trigger)〜 使い続けている今(Now)〜これからどのような体験を期待しているのか(Future)までの一連の体験全てを指す。

UXデザインが分かりにくい要因のひとつとして、メガネのようなモノ単体に対しての体験を指す場合もあれば、空間や環境、といった”雰囲気”を合わせて、モノの魅力を高めることを指す場合もあることが原因のひとつだろう。

まだまだ他にも要因は多く存在するのだが、ここでは割愛させていただく。

UX設計の具体例

体験(UX)を変える設計とはどのようなイメージだろう?

世界で成功している企業の中で、特にUX設計に時間をかけ、さらにユーザー体験を明確に変えたプロダクトといえば「ダイソン」が有名だろう。

※公式ページより引用

では、どのように「UX=ユーザー体験」を変えてきたのか紹介しよう。

このダイソン社で作られたサイクロン掃除機の第1号(DC01)が発売されたのが1993年のこと、15年という年月をかけて「5,127の試作品」と「数万人のユーザーヒアリングやテスト」を繰り返し、常にアップデートを繰り返してきた。もちろん現在でもだ。

具体的に、どのようなフローで改善を繰り返しているのかは下図を見て頂きたい。

ここで勘違いしてほしくないのは、「見た目=UIの改善」を繰り返してきたのではなく、使い勝手や機能をユーザーのニーズを抽出しながら改善を繰り返してきたことだ。

なんと、その数は5,000回以上というから驚きだ。

とてつもなく長く険しい道のりだということは言うまでもないだろう。

ゴミを捨てるときにホコリが舞う、交換が面倒、フィルターが目詰まりするなど様々な不満を持っているユーザーからの声にひとつひとつ丁寧に答えていったことによって、結果、人々の体験を変えることができた素晴らしい事例だ。

そもそもなぜUIとUXが同一に扱われるのか

UXデザインは、ユーザーが「サービスを認知し脳細胞が発火した瞬間」から、「サービスを忘れてしまうまで」の体験全てを指す。

UIとUXの関係が曖昧になりやすい要因のひとつは、その体験の中に「UI=インターフェイス」が包括されていることだ。

アプリやWEBサービスを例に考えると、

  • 「サービスを認知した瞬間から、使いやすい・使いづらい」という感情に繋がったことは、その瞬間・瞬間のインターフェイスから発信される情報(UI)のせいだったのか?

もしくは、

  • サービスを認知した瞬間から、何らかの環境要因や充電の持ちなどが積み重なって、フツフツと湧き上がってきた感情(UX)のせいだったのか?

ということを考えてみてほしい。

上の図で示されているように、UXの中にUIが包括されているのは、一連の体験の中で、ユーザーの感情を上向かせるためには、

「体験の設計×その体験を助けるインターフェース」

の両側からの課題解決が必要不可欠となるため、”UI/UX”のような曖昧な表現が生まれてしまう。

大切なのは、「UIとUXにあまり境界線を引こうとしないこと」だ

サービスを通じてユーザーの「小さな成功体験」を積み重ねていくためには、UI=インターフェイスデザイン、UX=体験デザインの両側から真摯なアプローチが必要だからだ。

UIデザインの改善案

ここからは、具体的にUIやUXをどのような改善策が考えられるのか見ていこう。

UIデザインの改善案

「問い合わせボタン」を例に考えてみる。

仮にあなたのWEBサイトにこの問い合わせボタンがあったとする。
どちらが「押す」という行動を後押ししてくれるだろうか?
さらに、この後どんなことが起こるのか分かりやすいのはどちらか?

おそらく答えは”右側”だろう。

UIを改善する上で大切なことは以下の通りだ。

  • 自然と行動想起ができるようなデザインであること
  • 次に何が起こるのか?少ない情報量で伝えてあげること
  • 文字情報と、カラーや形状の整合性が合っていること

挙げればキリはないが、この3点に気を配るだけで、全く別のサイトになるだろう。

UIデザインを設計ときに最も忘れてならないのは、

  • 「誰に」「どのような」情報を届け、総じてどのような体験を目指しているのか?

を考えながら作り上げていくことだ。

UIとUXが密接な関係にあるのは、このようにUIとUX設計を行ったり来たりしながら完成を目指すところにある。そのため切っても切り離せない存在であるということは理解できるだろう。

UXデザインの改善案

UXデザイン=ユーザー体験の改善については、UIデザインと比べて説明が非常に難しいので事例を元に紹介していこう。

UX設計のために踏んだ5つのステップ「ダグ・ディーツが小児患者とMRIにかけたデザインの魔法」とは?

GE(ゼネラル・エレクトリック)ヘルスケアという医療機器メーカーでCAT、PETやMRIスキャナのデザインを担当していたプリンシパル・デザイナーのダグ・ディーツ(Doug Dietz)氏。

ダグ氏は去年に米国講演会グループ「TED」のコミュニティであるサンノゼのTEDxで、自らのデザイン・プロジェクトの失敗と成功を語って、観客総立ちの拍手喝采を浴びた。

子供たちと家族のために医療業界を変革させる(英語のみ)

恐怖と苦痛を期待と冒険に変えた理由

20年もの経験を持つベテラン・デザイナーのダグ氏が、ユーザーエクスペリエンス(UX)のデザインに真剣に取り組むようになったきっかけは、とある少女の涙だった。

ダグ氏は、自分がデザインしたスキャナを設置して病室から出ようとしたとき、入れ違いに入って来た子供とその家族の姿を見た。

子供はまだ7歳くらいの幼い少女で、ダグ氏のデザインしたスキャナのユーザーとなる患者だったが、その少女はスキャナを見た途端、怖がって泣き出してしまったのだ。

薄暗い部屋に設置された低い音を立てる見慣れない大きな機械の内部に入るのが、どうしても嫌だと泣いて訴えていた。
そして、そんな少女をどうしてなだめればいいのか判らず、途方に暮れている両親の姿。

患者である子供のほとんどがこの少女と同じような反応を示し、鎮静剤が使用されていることを病院側から知らされたとき、ダグ氏の心は打ち砕かれた。

(幼い子供が病気になるだけで十分大変なことなのに、私がデザインしたスキャナのために、その子供や家族が余計な恐怖と苦痛を経験している…)

この問題を解決するために、機能やユーザビリティではなくユーザーの体験(エクスペリエンス)を改善するための新プロジェクトが開始された。

少女の体験を変えた5つのステップ

  1. Emphasize(まずは共感すること)
  2. Define(再定義する)
  3. Ideate(アイデアを創出する)
  4. Prototype(試してみる)
  5. Test(子供達に改めて使ってもらう)

    

1.共感するところから始める

Emphasizeとは共感能力のことだ。

「ユーザーである子供たちの気持ちを理解し、どうすれば彼・彼女らがスキャナを楽しく使えるのか」を追求するために、

ダグ氏のチームは、地元の保育園で子供達や子供の教育、医療に関する専門家らと数多いブレインストーミング・セッションを行った。

そして子供達について”徹底的”に学び、「子供たちが楽しいと思う経験は何か」「恐怖感を軽減させるためにできることは何か」を明確にしたのだ。

【共感とは、相手の意識を想像し、自分の意識に反映させる能力である】

 

2.再定義する

次に、現在抱える問題点や状況などを明確に定義した。
定義されたことは以下の3つだ。

  • 精神的苦痛を和らげるために、子供たちの80%に対して鎮静剤が使用される。
  • スキャンに必要な数分間、中にいる子供たちは身動きすることができない。
  • スキャナの外観や環境が、子供たちの恐怖感や不安感を増す。

   

3.アイデアを創出する

このプロジェクトでは、ユーザーである子供たちの五感を楽しませることにフォーカスし、以下のように改めて体験をデザインし直した。

  • 上部から流れる青い照明の下にある、その道を歩いていくと、 横には鯉が泳ぐ池が見える。
  • ジャスミンの香りが立ちこめられている部屋に入ると、そこにある踏み石が並べてある道の上を歩く。
  • スキャナの中にはカヌー・ボートが置かれており、子供たちは 「池の中から鯉が飛び跳ねるかもしれないから、この中に横たわって動かずじっとしていてね」と聞かされる。

   

4.プロトタイプ

上記で出したアイデアを、そのまま形にし実際に環境を整えた。

すると、このジャングル・アドベンチャーを見て、それまで嫌がっていた子供たちが、自分から進んでスキャナの中に入っていくようになった。

機能は全く同じスキャナなのにも関わらず、子供達の体験は明らかに変わった。

スキャナの中でじっとしていなければならない間も、「一体自分には何が起こるのだろう」という恐怖と不安から 「いつ鯉が池の中から飛び出してくるのだろう」という期待と喜びに変わったからだ。

ダグ氏は、新しいユーザー体験をデザインすることで【恐怖と苦痛】を【期待と冒険】に変身させたのだ。

 

5.ユーザーテスト

ジャングルアドベンチャーに続き、ダグ氏は海賊アドベンチャーや珊瑚シティなどというデザインを創り出し、それらも大成功させてしまう。

どちらも根底にあるコンセプトはジャングル・アドベンチャーと同じだが、各自のテーマに合わせて、以下のような独自の工夫がなされた。

海賊アドベンチャー

  • スキャナを船と見立てて内部に操舵装置するためのハンドル、外部には海を見立てた池のようなオブジェを設置。
  • ティキ像があり、ピナコラーダなどの飲み物が入ったグラスが置いてある南国のバー風インテリア。
  • 子供達が入室するときに海賊の帽子を渡され、看護婦さんは全員海賊の衣装を着るという演出。
珊瑚シティ

  • ディスコのミラーボールの白い照明を利用し、泡のように見せる。
  • 海中にいるような感覚を生み出すための光を落とした照明。
  • ハープの音楽。
  • スキャナを黄色い潜水艦のように見せるようなデザイン。

まとめ

このスキャナを導入した結果、ユーザーである子供達の体験は「怖くて恐ろしいもの」から「楽しくてワクワクするもの」に180度変化した。

その結果、鎮静剤を使う子供の数は激減し、子供が嫌がらないために時間や労力も短縮され、ユーザーである子供や、その家族の精神的負担を減らしただけではなく、病院側の利益も大幅に上昇した。

まさに相乗効果を生み出すことに成功した、ユーザーエクスペリエンスの好事例と言える。

 

さいごに

私たち人間はどうしても感情に支配される生き物であることに違いはない。

これから、どのように時代や技術が変わっても、私たちが人間であり続ける限り、お互いの【共感能力】は重要なもので在り続ける。

これから一体どんな分野で、なにを通じて、どんな物を創り出そうが、お互いデザイナーとして、ダグ氏が提唱するこの【デザインの鼓動】を常に感じ続けることがユーザーエクスペリエンスの改善にとって最重要であると言える。

「それだけのことか」と思う方もいるかもしれないが、【純粋にユーザーの課題を解決したい!】そう思えることこそが、ユーザーの体験をより良くする“きっかけ”になるのだろうと、改めて感じている。

【厳選】UXデザインを理解し、実践するための本7選|専門家が本当におすすめしたい本


UX関連の書籍が毎年増えてきている。
私は職業柄、UX関連の書籍が出版されれば、すぐ読むようにしているので、少しでも何かを得ようとむさぼるように読んできた。

今振り返ってみると、もっと効率よくUXデザインを学ぶことが出来たように思える。そんな私の失敗を踏まえて厳選した書籍をこれから紹介していくので、これからUXを学ぶ人のお役に立てれば幸いだ。

“重要なのはUXの何から学ぶべきかを整理すること”

UXの学習は、「どこから手をつけていけば良いのか? 」 「何から勉強するのが正解なのか? 」 が総じて分かりづらい。そこでUX JUMPでは以下3つの視点から、オススメしたい本だけを厳選して、順番に紹介していく。

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UXデザイナーのリアルな実態|業務内容から年収までわかりやすく紹介

UXデザイナー自体が少ないため、リアルな実態はあまり知られていない。

「UXデザイナーになりたい。」

「UXデザイナーってどんなことをやっているの?」

「UXデザイナーに依頼をすると、かなり高い請求がきた。」

・・・などという質問を良く受ける。

ここ数年で一般的にも認知されてきたが、まだまだIT界隈や外資系企業、感度の高いビジネスマンに知られている程度だろう。

この記事では、UXデザイナーが各職場(デザイン会社や事業会社など)でどのような業務を行っているのか、元Goodpatchデザイナーに協力のもと、紹介していく

この記事でわかること

  • UXデザイナーの年収がざっくりわかる
  • UXデザインのアウトプットや単価感がわかる
  • UXデザイナーに求められることがわかる

※もっとUXデザイナーに関する、より良い記事にしていきたいので、こういう情報が欲しいというものがあれば、コメントや『問い合わせ』にて質問などをしてもらえると幸いだ。

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人間中心設計とは?HCD資格保有者が難しいことばを使わず徹底解説

『人間中心設計』という言葉を初めて知った人にとっては、とっつきにくい用語だろう。

私自身、『人間中心設計』専門家という資格まで取ったが、いまだに好きな言葉ではない。

これから出来る限りわかりやすく『人間中心設計』について紹介していくが、初めに、いわゆる”教科書に書いてある定義”を紹介しておこう。

『ISO 9241-210:2010』における『人間中心設計』の定義は以下のとおりだ。

人間中心設計とは、システムの使い方に焦点をあて、人間工学やユーザビリティの知識と技術を適用することにより、インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的とするシステムの設計と開発へのアプローチである。

※『人間中心設計の国際規格ISO9241-210:2010のポイント』のP7より引用

私は10回ほど繰り返し読んでみたが、正直何のことかさっぱりわからなかった。

人間中心設計は難解な用語などではなく、UXをよりよくする上で重要なプロセスだ。

この記事が少しでも『人間中心設計』の考え方を理解する上で役に立てば幸いだ。

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UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?UXを正しく理解するための全知識【保存版】

皆さんようこそUXの世界へ。

UXに関する議論や説明は、初心者には難しすぎて実務で使えないものばかりだ。

あるレベルまではUXの解釈や定義は実務を行う者にとってそれほど問題にならないと考えている。

とはいえ、しっかりした定義を知りたいという方のために、広く認識されている『ISO 9241-210:2010』にて定義されたUXを紹介しよう。

UXとは、製品やシステム、サービスの利用、および/もしくは、予想された使い方によってもたらされる人々の知覚と反応である。

※『人間中心設計の国際規格ISO9241-210:2010のポイント』のP15より引用

この定義を見て、スッと腹落ちした人をこの記事の読者として想定していない。

この記事は、UXデザインの専門家を対象にしたものではなく、実務としてUXデザインに携わる方を対象にしている。

UXを感じ取り、理解してもらえるような構成になっているので、順番に読み進めてほしい。

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